上司に送るメールを書いていて「御社」と「貴社」のどちらを使うべきか手が止まってしまったことはないでしょうか。
電話口で「少々お待ちください」と言ったあとに「おられますか」「いらっしゃいますか」で迷う場面もよくあります。
場面ごとに敬語をどう使い分けるかが整理できていないと、毎回調べることになり仕事のスピードも落ちてしまいます。
この記事では、よく使う敬語表現をシーン別に整理しながら、判断基準と注意点も一緒に確認していきます。
・敬語の基本と使い分けの考え方がわかる
・会話とメールでそのまま使える例文がわかる
・貴社御社御中様など敬称の使い分けが整理できる
・迷ったときの優先順位と考え方のコツがわかる
敬語の基本と使い分けの考え方
敬語の種類や役割を知らないまま暗記しようとすると、数が多すぎて挫折しやすくなります。
まずは「誰を立てたいのか」「どんな場面なのか」という視点で整理しておくと、例文も覚えやすくなります。
ここでは敬語の全体像と、使い分けの基本ルールを確認していきます。
結論:敬語の使い分けの読みどころ
敬語の使い分けで押さえておきたい要点は、次の三つです。
一つ目は、相手と自分のどちらを立てたいのかをはっきりさせることです。
相手を立てたいときは尊敬語、自分や自分側を控えめに表現したいときは謙譲語を選びます。
二つ目は、場面に合った丁寧さのレベルを選ぶことです。
ビジネスでは、社外・初対面・目上の順に丁寧さを上げていくと考えると整理しやすくなります。
三つ目は、例文をそのまま覚えるのではなく「型」として覚えることです。
「〜していただけますと幸いです」「〜の件につきまして」など、型で覚えておくと別の内容にもそのまま応用できます。
多くの職場では、この三つのポイントを意識している人ほど、落ち着いた話し方だという印象を持たれやすいです。
敬語の種類とそれぞれの役割
敬語は、一般的に次のような種類に分けて説明されます。
尊敬語
謙譲語
丁寧語
美化語
特に、文化庁の「敬語の指針」では、尊敬語、謙譲語Ⅰ・Ⅱ、丁寧語、美化語という五つの種類に整理されています。
尊敬語は「いらっしゃる・おっしゃる」、謙譲語Ⅰは「伺う・申し上げる」、謙譲語Ⅱは「参る・申す」、丁寧語は「です・ます」、美化語は「お酒・お料理」などが代表例です。
(出典:文化庁「敬語の指針」)(文化庁)
役割で見ると、次のように整理できます。
尊敬語 … 相手や第三者の動作を高める表現
謙譲語 … 自分側の動作を控えめにし、相手を立てる表現
丁寧語 … 文全体を丁寧にする文末表現(〜です・〜ます)
美化語 … ものごとを上品に言い表す表現(お茶、お料理 など)
判断に迷ったら、まずは文末を丁寧語の「です・ます」で整え、そのうえで必要に応じて尊敬語・謙譲語を足す、という順番で考えると落ち着いて選びやすくなります。
敬語を使い分けるときの判断基準
敬語の使い分けで重要なのは「誰と誰が話しているか」と「どこで話しているか」です。
判断基準としては、次の三つを意識すると整理しやすくなります。
一つ目の基準は、話し相手と自分の関係です。
相手が目上・初対面・社外であるほど、丁寧さのレベルを上げます。
例えば、同じ会社の先輩に対しては「〜していただけますか」、取引先に対しては「〜していただけますでしょうか」と、少し表現を柔らかくするイメージです。
二つ目の基準は、話題になっている人がどちら側かです。
自分の会社の上司を取引先に紹介する場合などは、自分側の人なので謙譲語を使います。
「部長が申しております」のように、自分の会社の人には尊敬語ではなく謙譲語を使うのが一般的です。
三つ目の基準は、場面の堅さです。
社内のカジュアルな打ち合わせと、社外向けの正式なプレゼンでは、求められる敬語のレベルが異なります。
多くの現場では、社内は過度にかしこまりすぎない、社外は少し丁寧すぎるくらいでちょうどよい、という感覚で使い分けているケースが多いです。
間違えやすい敬語表現と注意点
敬語で特に間違えやすいのは、次のようなパターンです。
一つ目は二重敬語です。
「お伺いさせていただく」「ご利用される」など、尊敬語や謙譲語が重なってしまう表現は不自然になりやすいとされています。
文化庁の解説でも、「御利用される」のように謙譲語と尊敬語が重なった形は適切ではない例として紹介されています。
(出典:文化庁「敬語おもしろ相談室」第二話)(文化庁)
二つ目は、相手と自分を取り違える敬語です。
例えば、取引先に対して自分の上司を「いらっしゃいます」と言ってしまうと、相手ではなく自分側の人を持ち上げることになってしまいます。
この場合は「部長はただいま席を外しております」「部長から伺う予定です」のように、自分側には謙譲語を使うと自然です。
三つ目は、形だけ丁寧で中身が伝わらない表現です。
「お名前のほうをお伺いしてもよろしかったでしょうか」のように、必要以上に長くすると、かえって回りくどく感じられることがあります。
多くのビジネスマナー解説でも、「〜のほう」はできるだけ避け、簡潔で分かりやすい言い方を心がけることが勧められています。(Fujitsu)
代表的な使い分けパターンの全体像
敬語の使い分けは、代表的なパターンを押さえておくと一気に楽になります。
よくある型を、次のように整理しておくと便利です。
呼び方の型
相手の会社 … 貴社(書き言葉)/御社(話し言葉)
自分の会社 … 弊社・当社
動作の型
行く/来る/いる … いらっしゃる(尊敬語)/参る・伺う(謙譲語)
言う … おっしゃる(尊敬語)/申し上げる・申す(謙譲語)
依頼の型
「〜してください」 → 「〜していただけますか」
さらに丁寧に → 「〜していただけますと幸いです」
現場でも、こうした基本パターンを数個押さえておくだけで、大半のビジネス会話に対応できるという声が多く聞かれます。
まずは普段よく使う場面から、自分なりの「よく使う型リスト」を作っていくと、定着が早くなります。
シーン別・敬語の使い分け例一覧
ここからは、実際によくある場面ごとに、敬語の使い分け例を一覧で紹介します。
会話でそのまま使えるフレーズと、メールで使いやすい文章を並べて掲載します。
「自分のケースならどう言い換えられるか」をイメージしながら見ていきましょう。
ビジネス会話・来客対応での使い分け例
来客対応では、相手を立てながら、自分や社内の人は控えめに表現するのが基本です。
代表的な会話例を確認しておきましょう。
来客時の基本フレーズの例です。
A「本日はお越しいただきありがとうございます。」
B「こちらこそ、お時間を頂戴しありがとうございます。」
案内するときの表現は次のようになります。
A「会議室までご案内いたします。」
B「お足元にお気をつけください。」
社内の人について話すときは、自分側なので謙譲語を使います。
A「担当の佐藤がご説明いたします。」
B「少々お待ちいただけますでしょうか。」
判断基準としては、
相手の行動 … 尊敬語(お越しになる・いらっしゃる)
自分側の行動 … 謙譲語(伺う・ご案内いたす)
全体のトーン … 丁寧語(〜です・〜ます)
という組み合わせを意識すると、選びやすくなります。
現場では「忙しいとつい社内と同じカジュアルな言葉になってしまう」という声も多く聞かれます。
来客対応のときだけは、一度深呼吸をしてから丁寧な表現に切り替えるなど、自分なりのスイッチを用意しておくと安心です。
電話対応・取引先とのやりとりの例文集
電話では声だけのやりとりになるため、対面以上に言葉遣いの印象が大きくなります。
まずは名乗り方の型を押さえておきましょう。
受電時の基本例です。
A「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇でございます。」
B「いつもお世話になっております。株式会社△△の山田と申します。」
担当者を呼ぶときの表現です。
A「田中でございますね。少々お待ちいただけますか。」
B「申し訳ございません。田中はただいま席を外しております。」
ここでの判断基準は、
名乗り … 社名+名前+「でございます/と申します」
保留 … 「少々お待ちいただけますか」など、理由とセットで伝える
不在時 … 状況+お詫び+代替案(伝言・折り返し)
という流れを意識することです。
例えば、不在のときは次のような会話になります。
A「田中はただいま席を外しております。戻りましたら折り返しご連絡いたしましょうか。」
B「はい、恐れ入りますがお願いいたします。」
多くの会社では、電話対応が新人研修の最初のテーマになることが多く、最初にここを押さえておくと、その後の敬語の習得もスムーズになりやすいです。
メール・文書での敬語と宛名・敬称の使い分け
メールや書類では、話し言葉とは少し違うルールがあります。
特に、宛名と敬称(様・御中など)の使い分けは、よく迷いやすいポイントです。
基本的な考え方は次の通りです。
個人あて … 名前+様(例:株式会社〇〇 営業部 山田様)
部署・会社あて … 組織名+御中(例:株式会社〇〇 営業部御中)
「御中」は組織や部署に対して使う敬称であり、個人名には使いません。
また「御中様」のように、御中と様を重ねるのは不自然な形とされています。
(出典:大手スーツメーカー公式サイトのビジネスマナー解説)(洋服の青山公式サイト/オンラインストア)
会社名の呼び方も押さえておきましょう。
一般的には、
相手の会社 … 書き言葉では「貴社」、話し言葉では「御社」
自分の会社 … 社外向けには「弊社」、社内向けには「当社」
と使い分けます。
「貴社様」「御社様」のように、すでに敬語の言葉に「様」を重ねる形は避けるのが無難です。(Fujitsu)
メール本文の冒頭は、あいさつ+名乗り+用件の順にまとめると読みやすくなります。
例
「株式会社〇〇
営業部 山田様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の佐藤でございます。
〇月〇日の打ち合わせの件につきまして、資料をお送りいたします。」
判断基準としては、
宛名 … 個人か組織か
本文 … 読んだときに一息で意味が通るか
敬語 … 過剰になりすぎて読みにくくないか
という三つを確認すると、バランスを取りやすくなります。
社内・目上・同僚・部下への言い方の違い
同じ内容でも、社内の誰に向けて話すかで敬語のレベルは変わります。
一般的な目安を一覧で整理してみましょう。
社外・取引先・顧客
「先日の件につきまして、改めてお礼申し上げます。」
「ご都合をお聞かせいただけますでしょうか。」
社内の上司
「先日の件について、少しご相談したいことがございます。」
「資料をご確認いただけますか。」
同僚
「先日の件だけど、ちょっと確認してもらえる?」
「手が空いたら、この資料も見ておいてもらえると助かる。」
部下
「ここの数字だけ、もう一度チェックしておいてください。」
「分からないところがあれば、遠慮なく質問してください。」
判断基準は、
社外/社内
上下関係(目上・同僚・部下)
場面の堅さ(会議・雑談・連絡)
の三つです。
多くの職場では、社内であっても上司には「です・ます」で話すことが前提になっていますが、あまりにかしこまりすぎると距離が生まれる場合もあります。
「最低限の敬語は守りつつ、相手との関係に合わせて固さを調整する」という感覚で使い分けると、コミュニケーションもスムーズになりやすいです。
代表パターン別の言い換えフレーズ一覧
ここでは、よく使う表現の代表的な言い換えパターンを一覧で紹介します。
自分がよく使う場面をイメージしながら、言い換えの引き出しを増やしていきましょう。
お願いするとき
「〜してください」
→ 「〜していただけますか」
→ 「〜していただけますと幸いです」
断るとき
「できません」
→ 「今回は見送らせていただければと存じます」
→ 「誠に恐縮ですが、今回はご期待に添いかねます」
確認するとき
「分かりましたか」
→ 「ご不明な点はございませんか」
→ 「念のため、もう一度だけ確認させてください」
紹介するとき
「こちらが部長です」
→ 「こちら、弊社の部長の田中でございます」
→ 「日頃よりお世話になっております、弊社部長の田中でございます」
実務の現場では、これらの代表パターンをベースに、業界ならではの言い回しが加わっていきます。
最初は「自分がよく使う十個」程度に絞って覚え、徐々に増やしていくと負担が少なく、定着しやすくなります。
敬語の使い分けに迷ったときのコツとQ&A
ここまで見てきても、実際の場面では「どちらが正しいのか」迷うことが多くあります。
最後に、迷ったときの考え方と、現場でよくある疑問をQ&A形式で整理します。
失敗してしまったときのリカバリーの仕方も合わせて確認しておきましょう。
判断に迷うときの優先順位と考え方
敬語で迷ったときは、次の三つの優先順位で考えると判断しやすくなります。
一つ目は「失礼が少ない方を選ぶ」です。
多少硬くても、相手を下げてしまう表現やタメ口に近い表現よりは、丁寧な言い方を選んだ方が無難です。
二つ目は「相手にとって分かりやすい方を選ぶ」です。
敬語にこだわるあまり、長くて意味が伝わりにくい文章になってしまうと本末転倒です。
「この一文で、相手はすぐに理解できるか」という視点を持つとバランスを取りやすくなります。
三つ目は「一貫性を持たせる」です。
一通のメールの中で、くだけた表現と非常にかたい表現が混ざると、全体としてちぐはぐな印象になりやすくなります。
文書全体を見て、トーンがそろっているかも確認するのが大切です。
多くのビジネス現場では、完璧な敬語よりも「失礼にならない」「読みやすい」ことが重視される傾向があります。
迷ったときは、この三つの基準に沿って選べば、大きく外すことは少なくなります。
現場でよくある失敗パターンとリカバリー
実際の仕事の場でよくある失敗パターンと、その後のフォローの仕方をいくつか挙げます。
よくある失敗例
「部長はいらっしゃいますか」と、取引先に自分の会社の部長を尊敬語で呼んでしまう
「御社様」「貴社様」と書いてしまう
「ご苦労様です」を目上の人に使ってしまう
こうした場合、多くの現場では、気づいたタイミングで軽く言い換える、あるいは次の機会に丁寧な表現を意識する程度で問題ないことがほとんどです。
例えば、会話の途中で気づいたときは、次のように自然に言い換えます。
A「部長はいらっしゃいますか……失礼いたしました。田中はただいま席を外しております。」
メールで宛名を間違えてしまった場合は、次のメールでさりげなく正しい表現を使うことで、一貫性を整える方法もあります。
敬語の間違いは、多くの場合「不慣れだっただけ」と受け止められます。
むやみに落ち込まず、次に生かす姿勢を持つことが何より大切です。
よくある質問
Q 「御社」と「貴社」はどう使い分ければよいですか。
A 一般的には、話し言葉では「御社」、書き言葉では「貴社」を使うと整理しやすいです。
Q 「ご苦労様です」と「お疲れ様です」はどちらを使うべきですか。
A 目上の人には「お疲れ様です」を使う方が無難とされることが多いです。
「ご苦労様です」は、目上の人から目下の人に向かって使う表現と説明されることが多いためです。
Q 社内メールでも、敬語はきちんと使うべきですか。
A 社内であっても、上司や年上の同僚に対しては、基本的に敬語を使うのが一般的です。
ただし、チームの雰囲気によっては、ある程度くだけた表現が使われることもあります。
Q 完璧な敬語が使えないと失礼でしょうか。
A 多くの場合、敬語の完璧さよりも「相手を敬う姿勢」が伝わっているかどうかが重視されます。
基本的なルールを押さえつつ、少しずつ表現の幅を広げていくことが大切です。
敬語の使い分けと例の一覧についてのまとめ
・敬語は相手との関係性と場面で選び分ける
・敬語の種類は尊敬語謙譲語丁寧語美化語が基本
・相手を立てるときは尊敬語自分側は謙譲語を使う
・文末のですますは丁寧語として最初に整える
・ビジネス会話では社外に敬語社内はやや控えめが目安
・来客対応では相手を上げ自分と社内を下げて表現する
・電話対応は社名名前を先に名乗り要件を簡潔に伝える
・メール文書は宛名と敬称を確認し御中様を混同しない
・貴社御社当社弊社など会社名の呼び分けを押さえる
・依頼はお願いいたしますより柔らかい表現も使い分ける
・クッション言葉で急なお願いや断りを丁寧に伝えられる
・二重敬語過剰な敬語はかえって不自然になりやすい
・迷ったときは失礼の少ない表現を優先して選ぶ
・相手の年齢立場に加え社風業界の雰囲気も考慮する
・典型例をストックし自分の言葉に言い換えて練習する
・敬語は完璧さよりも相手を敬う姿勢が伝わることが大事
・結論から書く文章の基本と今すぐ使えるコツ
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