ある日突然、会議で「このファネルの数字が良くないですね」と言われたものの、そもそもファネルの意味が分からず、資料のどこを見ればいいのか固まってしまうシーンは少なくありません。
聞き返しづらいまま話が進み、自分だけ置いていかれているような感覚になると、モヤモヤした気持ちが残ります。
この記事では、そのモヤモヤを解消するために、ファネルの基本的な意味から具体例、実務での使い方までを段階的に整理していきます。
・ファネルの基本的な意味とマーケで使われる背景
・代表的なステップとマーケティングファネルの全体像
・具体例を通じて自社のファネルをイメージする方法
・実務でありがちな誤解を避ける判断基準と注意点
ファネルの意味と基本的な考え方を押さえる
まずは、ファネルという言葉が何を指していて、どのような場面で使われるのかを整理します。
ここで全体像をつかんでおくと、その後に出てくる具体的なステップや数字の見方も理解しやすくなります。
専門用語を増やすというより、顧客の行動を整理するためのシンプルな物差しを手に入れるイメージです。
ファネルの結論と要点3つ
最初に、ファネルを使う意味の要点を三つに絞って整理します。
1つ目は、顧客の行動を段階ごとに可視化する枠組みであることです。
認知した段階の人数、興味を持った人数、検討に進んだ人数、購入した人数というように、流れを分けて見ることで全体の流れが一目で分かるようになります。
2つ目は、どこでどれだけ数が減っているかを把握できることです。
上から見込み客が多く入り、下に進むほど少なくなるため、ろうと形の図で表されます。
どの段階で特に人数が減っているかを見ることで、改善すべきボトルネックを見つけやすくなります。
3つ目は、自社のビジネスや顧客に合わせて設計する前提の考え方であることです。
一般的な型はあっても、業種や商材、BtoBかBtoCかによって適切な段階の数や名前は変わります。
そのため、多くの場合は他社の図をそのまま流用するのではなく、自社のプロセスを整理し直してからファネルを設計していきます。
現場では「広告のクリック数だけ増えても、商談や購入につながっているか分からない」という悩みがよく聞かれます。
ファネルを使うと、クリックした後に資料請求や問い合わせに進んだ人の割合、そこから実際の商談になった割合などが分かり、数字の話がしやすくなります。
ファネルの用語の意味と前提を整理する
そもそも「ファネル」とは、英語の funnel、つまりろうとを意味します。
上が広く、下に行くほど狭くなる形が、多くの見込み客が入り少しずつ絞り込まれていくイメージに近いため、この名前がよく使われています。
マーケティングファネルは、見込み客が認知から購入に至るまでの顧客旅程を段階ごとに整理したモデルとされています(出典:HubSpot公式サイト)。 (hubspot.com)
日本語の解説でも、顧客の購買行動をいくつかのステップに分解し、どの段階で離脱しているかを分析するためのフレームワークと説明されることが多いです(出典:HubSpot日本語公式サイト)。 (HubSpot)
一方、営業ファネルやセールスファネルという言い方をする場合は、商談化から受注までといった、より営業寄りのプロセスに絞った図を指すことが一般的です。
ただし、どこからどこまでをマーケティング、どこからどこまでを営業とみなすかは組織によって異なるため、社内で定義を合わせることが前提になります。
また、ファネルに含めるステップの数もさまざまです。
顧客獲得のファネルでは、認知、興味、検討、比較、購入、継続のように5〜7段階ほどに分けるケースがよく見られますが、すべての企業が同じ段階を使っているわけではありません。
BtoBの高額商材では検討や比較のステージを細かく分けることが多く、ECサイトではカート投入や会員登録といったアクションを重視するなど、前提条件によって構成は変わります。
ファネルの代表的な種類とステップ
よく使われるファネルには、主に次のようなものがあります。
1つは、広告やコンテンツ施策を含めたマーケティングファネルです。
広告のインプレッション数、サイト訪問数、資料ダウンロード数、セミナー参加者数、商談数、受注数といった流れを1枚の図で整理します。
もう1つは、営業プロセスに焦点を当てた営業ファネルです。
リードから商談化、提案中、見積提示、最終調整、受注といったように、営業チームの進捗管理に使われます。
顧客獲得全体を対象にしたファネルのステージとしては、認知、興味、検討、決定、購入、継続といった分け方が一般的に紹介されています(出典:Salesforce公式サイト)。 (salesforce.com)
ただし、実際の運用では「資料請求」「無料トライアル」「見積依頼」など、自社にとって重要な行動をステップとして追加するケースも多く見られます。
例えば、SaaSのBtoBサービスであれば、「ホワイトペーパーDL」「ウェビナー参加」「個別デモ」「トライアル開始」「本契約」といった複数の接点が存在します。
この場合、単に「興味」「検討」とラベルを貼るだけではなく、それぞれの段階で顧客が何を知りたくてどの情報に触れているのかを整理することで、より実態に近いファネルになります。
ファネルの考え方が役立つ場面
ファネルは、規模の大きい企業だけのものではありません。
次のような悩みを持つ場面で特に役立ちます。
例えば、広告経由のサイト訪問者数は増えているのに、問い合わせや購入がほとんど増えていないケースです。
このときに、訪問者数、商品ページ閲覧者数、カート投入者数、購入者数というファネルを作ってみると、「商品ページを見ている人がそもそも少ない」「カートに入れた後でかなり離脱している」といった具体的な問題が見えてきます。
実務の現場では、「とりあえず認知を増やそう」という議論と「既存顧客のアップセルを増やそう」という議論が同時に行われ、優先順位があいまいになることが少なくありません。
ファネルを描いて、どの段階の改善が売上や継続率に一番効きそうかを比較すると、限られたリソースをどこに集中させるか判断しやすくなります。
また、チーム間のコミュニケーションにも効果があります。
例えば、マーケティング担当者が「リードは十分に渡している」と感じていても、営業担当者からは「商談につながるリードが少ない」と受け止められていることがあります。
こうしたギャップも、ファネル上で「リード数」「商談数」「受注数」を並べ、各段階の定義と数字を共有することで、原因を一緒に探りやすくなります。
マーケティングでファネルを活用するときのポイント
ここからは、実際にマーケティングや営業の現場でファネルを活用するときのポイントを見ていきます。
数字の見方や設計の流れだけでなく、誤解しやすい点や注意点も合わせて押さえておくことで、日々の会議での会話がスムーズになります。
特に、これから初めて自社のファネルを作る場合は、最初から完璧な図を目指すより、シンプルでも共通認識をそろえることを重視するのが現実的です。
ファネルで見るべき判断基準
ファネルを見るときに意識したい判断基準は、大きく次の三つです。
1つ目は、各段階のボリュームです。
例えば、月間のサイト訪問者数、資料請求数、商談数、受注数といった絶対数を確認します。
ボリュームが極端に小さい段階があると、そもそも比較や検証がしにくくなるため、最初はある程度の母数を確保することも重要です。
2つ目は、段階ごとの転換率です。
訪問者数に対して資料請求をした人の割合、資料請求から商談に進んだ割合、商談から受注に至った割合といった数字を見ます。
同じ売上でも、トップの母数が多くて転換率が低いパターンと、トップは小さくても転換率が高いパターンでは、改善のアプローチが変わります。
3つ目は、顧客の質とコストのバランスです。
例えば、広告Aは多くのリードを獲得できるが受注まで進む人は少ない、一方で広告Bはリード数は少ないが受注率が高い、といった違いがよく起こります。
このとき、単純にファネルの上部の数だけで評価せず、各ステージのコストと成果まで含めて判断することが大切です。
実務では、すべての指標を一度に見ようとして「結局どこから手をつけるべきか分からない」という状態になりがちです。
まずは「ボリューム」「転換率」「質とコスト」という三つの軸のうち、どれを優先的に改善したいかを決めることで、議論が整理されます。
ファネル設計の流れと具体例
ファネルを設計するときの基本的な流れは、次のようになります。
1つ目のステップは、ゴールを明確にすることです。
新規の購入数を増やしたいのか、無料トライアルからの有料転換率を高めたいのか、既存顧客のアップセルを増やしたいのかによって、見るべきファネルは変わります。
2つ目のステップは、顧客の行動を時系列に書き出すことです。
広告を見た、サイトに訪れた、資料をダウンロードした、セミナーに参加した、営業と打ち合わせをした、見積を検討した、契約したといったように、実際に起きている行動をできるだけ具体的に並べます。
3つ目のステップは、似た性質の行動をまとめて段階にすることです。
例えば、「ブログ記事閲覧」「サービスページ閲覧」「料金ページ閲覧」を「サイト訪問・閲覧」という1ステージにまとめるなど、管理しやすい粒度に整理します。
4つ目のステップは、各段階の数字をどう取得するかを決めることです。
アクセス解析ツールやマーケティングオートメーション、CRMなど、既に使っているツールから取れる数字と、手作業で記録する必要がある数字を切り分けます。
ここで無理に細かくし過ぎると運用が続かなくなるため、最初は「確実に追える指標」だけに絞るのも現実的な選択肢です。
具体例として、資料請求から商談に至るまでのファネルを簡略化すると、次のようになります。
広告表示 → クリック → サイト訪問 → 資料請求フォーム到達 → 資料請求完了 → 営業からの初回連絡 → 商談実施
このように一連の流れを明文化しておくと、例えば「資料請求フォーム到達から完了までの離脱率が高い」「初回連絡までの日数が長い」といった問題も見つけやすくなります。
実務でよくある誤解と注意点
ファネルを扱う際に、実務で特によく見られる誤解や注意点を整理します。
1つ目の誤解は、ファネルの段階を増やすほど精度が高まると考えてしまうことです。
段階を細かく分けると一見詳しく見えるものの、運用が難しくなり、肝心の数字入力が追いつかなくなるケースが少なくありません。
最初はシンプルな段階で運用を始め、必要に応じて分解していくほうが継続しやすいです。
2つ目の注意点は、部門やツールごとに定義がバラバラになりやすいことです。
マーケティングチームの「リード」と営業チームの「リード」、CRM上の「リード」がそれぞれ違う意味で使われていると、同じ言葉で違う数字を指してしまいます。
このため、「このファネル上のリードはどの条件を満たした人か」という定義を最初に文書化しておくことが重要です。
3つ目の注意点は、ファネルを一方向の直線的なものとしてとらえ過ぎないことです。
実際の顧客行動は、サイトを何度も行き来したり、他社サービスを比較しながら検討したりと、行き戻りが多く発生します。
ファネルはあくまで把握しやすくするための図なので、「現実の行動はもっと複雑である」という前提に立ち、あまり細部まで再現しようとしないほうが扱いやすくなります。
4つ目の注意点は、地域や業界によって前提が変わることです。
例えば、訪問営業が中心の業種と、オンライン完結型のサブスクリプションサービスでは、顧客が情報を集める方法も、最終決定に関わる人の数も異なります。
一般的なファネルの例を参考にしつつも、自社の商習慣や顧客の意思決定プロセスをよく観察して設計することが欠かせません。
データ計測と改善で押さえたいポイント
ファネルを作った後、どのように改善に活かしていくかも重要です。
実務の現場では、トップの数字、例えば「サイト訪問数」や「リード獲得数」だけが重視されることがあります。
しかし、ファネルの目的は、どの段階にテコ入れすると全体の成果に最も効くかを見極めることです。
改善の進め方としては、次のような手順が現実的です。
1つ目に、直近で課題感の強いステージを一つ選びます。
例えば、「資料請求から商談への転換率が低い」といったステージです。
2つ目に、そのステージでの顧客の気持ちを仮説として言語化します。
「資料請求したものの、自社向きかどうか確信が持てずに連絡を返していない」などのイメージです。
3つ目に、その仮説に基づいて小さな施策を複数試します。
メールの文章を変える、電話のタイミングを早める、資料の中に事例紹介を増やすといった工夫が考えられます。
4つ目に、施策前後でファネルの数字を比較し、改善の有無を確認します。
ここで大きな変化がなくても、仮説が一つ検証できたと考え、別の仮説やステージに進んでいくことが大切です。
現場では、「どの数字をどれくらい改善できれば良いのか」といった問いがよく出てきます。
このとき、いきなり理想値を決めるのではなく、まずは過去数か月の平均値を基準に、少しずつ改善しているかどうかを確認する運び方が多くの組織で採用されています。
ファネルに関するよくある質問
Q1 ファネルは小規模なビジネスでも意味がありますか
小規模なビジネスでも、顧客がどの段階で離脱しているかを把握することは重要です。
「来店は多いが成約が少ない」「資料請求はあるが商談が少ない」といった悩みがある場合、シンプルな二〜三段階のファネルから始めるだけでも、課題の整理に役立ちます。
Q2 ファネルのステージ名は一般的な型に合わせたほうがよいですか
一般的な型を参考にすることは役立ちますが、最終的には社内で直感的に理解できる名前にすることが多いです。
定義が分かりにくいと現場で混乱が生じるため、「このステージに入る条件」を一文で説明できるかどうかを基準に見直すとよいでしょう。
Q3 オンラインとオフラインの施策が混在していても、同じファネルで扱えますか
扱えますが、計測の方法や粒度が違うと比較しづらくなります。
オンラインとオフラインを同じステージに含める場合は、「何をもって1カウントとするか」をあらかじめ決めておくことがポイントです。
Q4 ファネルとカスタマージャーニーはどう違いますか
カスタマージャーニーは、顧客の行動や感情の変化を時系列で描いたストーリーに近い概念です。
一方、ファネルは主に人数や割合を管理するための枠組みとして使われます。
実務では、カスタマージャーニーで顧客の体験を整理し、その上でファネルに落とし込んで数字管理を行うという使い分けがよく見られます(出典:HubSpot公式サイト)。 (hubspot.com)
ファネルの意味と基本についてのまとめ
・ファネルは顧客の行動を段階的に可視化する重要な考え方
・上から下に進むにつれて見込み客の数が少なくなっていく仕組み
・マーケティングファネルは認知から購入までを整理する枠組み
・営業ファネルは商談化以降の進捗と確度を一元的に管理する
・一般的なステップは認知興味検討比較購入などに分かれる
・自社のビジネスモデルに合わせて段階名や定義を調整してよい
・重要なのは各段階で顧客が何を感じ何を求めているのか整理する
・段階ごとにKPIと見るべき数字を決めておくと管理しやすい
・どこで離脱が多いかを見ると改善すべきボトルネックが分かる
・広告だけでなくサイト接客メール営業活動なども含めて考える
・現場では部門ごとにファネルの定義が違うことが多い
・最初に用語とステップ定義をそろすことで混乱を防げる
・短期の成果だけでなく中長期の育成ステップも設計に含める
・ファネルは静的な図ではなく定期的に見直す運用前提のツール
・自社の顧客像と購買プロセスを言語化することで精度が高まる
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