ある日レポートを作ろうとして顧客名の表記ゆれや住所の抜け漏れだらけで集計が合わず手作業の修正に追われてしまうことがあります。
こうした「なんとなく不安なデータ」をそのまま使うと分析結果や判断を誤るリスクが高まります。
そのため多くの現場ではデータクレンジングと呼ばれる「データを整える作業」を通じて品質を高めてから活用しています。
この記事ではデータクレンジングとは何か、具体的に何をしてどのような手順で進めればよいかを、初めての方にもわかるように整理します。
・データクレンジングの意味と目的が理解できる
・どんな作業を行うのか代表例と注意点がわかる
・実務で使えるデータクレンジングの基本手順を学べる
・つまずきやすいポイントと判断基準を事前に押さえられる
データクレンジングとは何かを理解する
この章ではまず、データクレンジングという言葉の意味と全体像を整理します。
「結局何のためにやるのか」「どこまでやればよいのか」がぼんやりしていると、作業量ばかり増えて負担になりがちです。
要点を押さえておくことで、必要以上に手を広げず、目的に合った範囲で進めやすくなります。
データクレンジングの結論と要点3つ
データクレンジングについての要点は次の3つです。
1つ目は、誤りや不整合を減らしてデータを信頼できる状態に近づけるためのプロセスであることです。
生データには入力ミス、変な記号、古い情報などさまざまな問題が含まれています。
それを見つけて修正・除外することで、分析や業務判断に使える品質に整えます。
データクレンジングはデータクリーニングやデータクリーニングとも呼ばれ、誤りや不整合を特定して修正するプロセスと説明されています。
(出典:IBM公式サイト)
2つ目は、目的に応じて「どこまできれいにするか」の基準を決める必要があることです。
マーケティングの集計に使うのか、重要な監査用レポートに使うのかによって許容される誤差が変わります。
3つ目は、一度きれいにして終わりではなく、継続的な取り組みとして設計する必要があることです。
システムや業務が変わるたびに、新しいパターンの不備が紛れ込むことが多いためです。
データクレンジングの基本的な意味
データクレンジングは、簡単に言うと「データを使える状態に整える作業」です。
もう少し具体的には、次のような処理を含みます。
- 間違った値やあり得ない値を見つけて修正または削除する
- 欠けている値を、ルールに基づいて補完するか空欄のまま扱いを決める
- 重複しているレコードを統合する
- 同じ内容なのに書き方が違う項目を統一する
データ品質管理の文脈では、データクレンジングはデータプロファイリングやデータ検証などと並ぶ代表的な取り組みとして位置づけられています。
(出典:IBM Data Quality 解説ページ)
たとえば「東京都港区」「東京都 港区」「東京 港区」といった表記が混在している顧客データを想像してみてください。
人が見れば同じ場所だとわかりますが、機械にとっては別の値です。
このままでは正しい集計ができないため、あらかじめ「東京都港区」にそろえておく、といった作業がデータクレンジングにあたります。
マスターデータや入力ルールとの関係
データクレンジングは、単独で存在しているわけではありません。
実務では次のような要素と密接に関係します。
- 商品マスターや顧客マスターなどのマスターデータ
- 項目ごとの必須・任意、桁数、形式などの入力ルール
- コード体系や部門ごとの略称などの業務ルール
たとえば「ステータス」項目ひとつを取っても、「新規」「見込」「受注」の3種類にしたい部門と、「New」「Open」「Closed」と英語で扱いたいシステム部門で認識がずれていることがあります。
このようなとき、どちらを正とするか、過去データをどう変換するかは業務ルールとマスターに基づいて決めていきます。
現場では、マスターや入力ルールが明確でないままデータクレンジングだけを始めてしまい、「直したつもりが別の部門からは困ると言われる」というケースもよく見られます。
何を正しい状態とみなすかを関係者で共有してから作業することが重要な前提になります。
データクレンジングで実際に行う主な作業
ここでは、データクレンジングでよく行われる具体的な作業内容を整理します。
すべてを一度に完璧にこなす必要はありませんが、自分たちのデータでどこに問題が多いかを知っておくと優先順位が付けやすくなります。
代表的なパターンを知ることで、ツールの設定や手作業のポイントも見えやすくなります。
欠損値や異常値への対応
多くのデータには「空欄」や「あり得ない値」が含まれています。
たとえば、年齢が「0」や「150」となっていたり、売上金額がマイナスになっているようなケースです。
こうした欠損値や異常値への対応には、次のようなパターンがあります。
- 分析に使わない、影響が小さい項目ならそのままにする
- 統計的な方法や代表値を使って補完する
- どう扱うべきか判断が難しい場合はフラグを付けて別扱いにする
- 誤りが明らかな場合はレコードごと除外する
たとえば「アンケートの自由記述が空欄」は問題にならないかもしれませんが、「受注日が空欄」は集計結果に直結します。
どの項目が業務上重要かを踏まえたうえで補完や除外のルールを決めることが判断基準になります。
重複データや表記ゆれの統一
同じ顧客が複数回登録されている、同じ商品コードに複数の名称が存在する、といった重複や表記ゆれも典型的な問題です。
具体的には次のような作業を行います。
- 住所や電話番号、メールアドレスなどを手掛かりに重複候補を抽出する
- 「株式会社」「(株)」「株」などの表記を統一する
- 全角と半角、ひらがなとカタカナをそろえる
- 不要なスペースや記号を取り除く
たとえば、ある現場では「山田太郎」「山田 太郎」「ヤマダタロウ」が別人として登録されており、メール配信で同じ人に3通送ってしまうトラブルが起きていました。
このようなケースでは、姓と名、ふりがな、メールアドレスなどを照合しながら重複候補を見つけて統合することで、誤配信のリスクを下げられます。
外部データとの突合・コードチェック
社内のデータだけでは正しいかどうか判断できない場合、外部データとの突合が有効です。
たとえば次のようなケースがあります。
- 郵便番号と住所を郵便番号辞書と照合して補正する
- 取引先コードを業界団体のコード体系と比較して整える
- 製品コードを最新マスターと突き合わせて廃番品を特定する
データマイニングや分析サービスの解説でも、データクレンジングやフィルタリングを通じて不整合を見つけることが重要とされています。
(出典:Microsoft公式ドキュメント)
このとき、どの外部データを信頼の基準にするかを決めておくことが判断基準になります。
公的なデータベースや自社の正式マスターなど、根拠の明確なものを優先するのが一般的です。
データクレンジングの手順と進め方
ここからは、実務でデータクレンジングを進めるときの基本的な流れを整理します。
すべての現場で同じとは限りませんが、おおまかなステップを押さえておくと、自社の事情に合わせてアレンジしやすくなります。
「どこから手を付けるか」「どこで区切るか」に迷いがちな方は、ひとつの目安として参考にしてください。
実務での判断基準と優先順位の付け方
データクレンジングは、やろうと思えばどこまでも細かく取り組めます。
しかし現実には、時間も人手も限られています。
そのため、次のような基準で優先順位を付けると現実的です。
- ビジネスへの影響度
影響の大きいレポートや意思決定に使う項目を優先する - 発生頻度
多くのレコードで繰り返し発生している問題から手を付ける - 修正しやすさ
ルール化しやすいものや自動化しやすい処理から着手する
たとえば、売上集計に必須の「受注日」と「金額」の異常値を直すことは、メールマガジンで使う「敬称」の表記ゆれを直すよりも先に対応すべきという判断になりやすいです。
「影響度 × 発生頻度 × 修正しやすさ」をざっくり評価して、上位から取り組むと、限られたリソースでも成果を出しやすくなります。
データクレンジングの基本手順
一般的なデータクレンジングの流れは、次のようなステップに整理できます。
- 目的の確認
どの業務やレポートのためにデータを整えるのかを明確にする - 現状データの調査
欠損や異常値、重複、表記ゆれなどの問題点を洗い出す - ルールの設計
何を正とするか、どう変換・補完するかを業務ルールと照らして決める - ツール設定と試行
ETLツールや表計算ソフトなどでルールを反映し、サンプルデータで試す - 本番データへの適用
バックアップを取ったうえで、本番データに処理を適用する - 結果の確認と修正
修正漏れや想定外の変換がないかをチェックし、ルールを微調整する - ルールの文書化と定期運用
手順や変換ルールを残し、定期的に同じ処理を行えるようにする
実務では、ある部門でデータクレンジングに成功したルールをテンプレート化し、他部門のデータでも応用するケースが多く見られます。
一度作った処理を、再利用しやすい形で残しておくことも大切です。
たとえば会話にすると次のようなイメージです。
担当者A「とりあえず空欄だけ埋めればいいですよね」
担当者B「今回の目的は新商品の効果測定だから、最低限日付と金額とチャネルだけは確実にそろえたいですね」
このように、目的と優先項目を最初に共有しておくことで、過剰な作業や見落としを減らせます。
現場で起こりがちな誤解と注意点
データクレンジングには、いくつか誤解されやすい点があります。
ひとつは、「データクレンジングを一度しっかりやれば、あとは何もしなくてよい」という考え方です。
実際には、新しい商品やサービスの追加、システム改修、担当者の交代などをきっかけに、再び別の種類の不整合が発生することが多くあります。
もうひとつは、「完全に正しいデータを目指さなければ意味がない」という誤解です。
しかし、現実には情報源そのものがあいまいなケースも多く、どこまで修正しても不確実性が残ることがあります。
業務上許容できる範囲を関係者で決め、その範囲までは自動処理と人の確認を組み合わせて整えるという割り切りも重要です。
また、個人情報を含むデータを扱う場合は、クレンジングの過程で不要な情報を表示し過ぎない、作業者のアクセス権限を適切に制御するなど、情報管理の観点でも配慮が必要です。
データ品質の向上とプライバシー保護は両立させる必要があり、どちらか一方だけを重視するとトラブルにつながることがあります。
データクレンジングとは何をするかのまとめとよくある質問
最後に、データクレンジングに関してよくある疑問を整理し、本文の要点をまとめます。
ここまでの内容を振り返りながら、自社でどこから手を付けるかを考えるきっかけにしてください。
よくある質問
Q1. データクレンジングとデータプロファイリングは何が違うのか
データプロファイリングは「データの状態を調査して特徴や問題点を把握すること」に重点があり、その結果を受けて誤りを修正したり統一したりする作業がデータクレンジングです。
実務では、プロファイリングで問題の場所と種類を把握してからクレンジングのルールを設計する流れが一般的です。
Q2. ツールがあれば人の確認は不要になるのか
多くのツールは欠損や形式の不一致、重複候補などを自動で検出できますが、「どちらを正とするか」の判断や例外対応は人の判断が必要になることが少なくありません。
ツールと人の確認を組み合わせることで、効率と精度のバランスを取りやすくなります。
Q3. どのタイミングでデータクレンジングを行うべきか
新システム導入前の移行時、大きな分析プロジェクトの開始前、定期レポートの精度が気になり始めたタイミングなどがきっかけになることが多いです。
一方で、日次や月次のバッチ処理の中に簡易的なクレンジングを組み込んでおき、大規模な見直しは年に一度行うなど、定期運用と組み合わせる方法もあります。
Q4. すべてのデータに同じレベルのクレンジングが必要か
必ずしもそうとは限りません。
ビジネス上の重要度や用途によって、求められる品質レベルは変わります。
たとえば、監査に使う財務データと社内の参考用メモでは求められる正確さが違います。
用途に応じて、どこまで整えるかの基準を変えるのが現実的です。
データクレンジングとは何をするかのまとめ
・データクレンジングは誤りや不整合を減らしデータ品質を高める作業
・代表的な作業は欠損補完異常値処理重複削除表記統一などがある
・データクレンジングの目的は分析や業務判断を支える信頼できる情報にすること
・すべてを一度に直すより重要なデータと項目から優先順位を決めて進める
・現状把握としてデータの状態をプロファイリングし問題点を洗い出す
・業務ルールやマスターデータを基準に正しい値や形式を定義しておく
・手順は目的確認現状調査設計実施検証のサイクルで繰り返す
・ツールの自動処理と人の確認を組み合わせると精度と効率の両立に近づく
・仕様変更や新システム導入時にはクレンジングのルールも見直す
・担当部門をまたいで用語定義やコード体系をそろえると表記ゆれを減らせる
・ログや履歴を残すと修正内容の説明ややり直しがしやすくなる
・つぎはぎの修正だけに頼らず入力設計や業務フローの改善も合わせて検討する
・個人情報や機密情報はマスキングやアクセス管理などの配慮を行う
・完全な正しさを目指し過ぎずビジネス上許容できる品質基準を決めておく
・小さなデータクレンジングを継続し長期的にデータ品質を維持管理していく
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