月次レポートのたびに複数のシステムからCSVをかき集めて、重いExcelとにらめっこしているうちに一日が終わってしまうと感じたことはありませんか。
そのつらさを解消する手段としてよく名前が挙がるのがDWHですが、既にDBもあるのに本当に必要なのか、何が違うのか分からず悩むケースが多いです。
この記事では、DWHとDBの基本と違い、どんな場面でどちらを使うとよいかを整理していきます。
・DWHとDBの基本的な役割と仕組みの違い
・分析向きのDWHと業務処理向きのDBという大まかな整理
・自社にDWHが向いているかを判断する基準
・DWHとDBを組み合わせる代表的な使い方と注意点
DWHとDBの基本を整理する
最初に、DWHとDBがそれぞれ何をする仕組みなのかをざっくりそろえます。
ここがあいまいなままだと、その後の違いの説明も分かりにくくなってしまいます。
まずは用語の意味と前提、そしてざっくりした結論を確認しておきましょう。
結論(要点3つで見るDWHとDBの違い)
最初に全体像の結論を三つにまとめます。
一つ目は、DWHは主に分析のため、DBは主に業務処理のために使われるという役割の違いです。
売上分析や顧客行動分析など、たくさんの履歴データをまとめて眺めるのがDWH、
受注登録や在庫更新など、日々の業務処理を素早く正確に行うのがDBというイメージです。
二つ目は、DWHは複数システムのデータを集約する場所であり、DBは個々のシステムごとに存在しやすいという構造の違いです。
販売管理システムのDB、会計システムのDB、人事システムのDBなどがそれぞれ存在し、
それらから必要なデータだけを集めて一つにまとめたものがDWH、という構成が一般的です。
三つ目は、DWHは過去の履歴データを長期間ためて傾向を見ることに強く、DBは直近のデータを素早く扱うことに強いという時間軸の違いです。
「ここ数年の推移を見たい」となればDWH、「今この商品の在庫は何個か」となればDBが活躍します。
用語の意味と前提:DWHとDBは何をする仕組みか
DWHは「Data Warehouse(データウェアハウス)」の略で、さまざまなシステムから集めたデータを一か所に蓄え、分析や意思決定に使えるようにした仕組みです。
クラウドサービスの公式説明でも、複数のソースから集約したデータを分析のために保存する中央リポジトリと紹介されることが多いです(出典:AWS公式サイト) (Amazon Web Services, Inc.)
一方、DBは「Database(データベース)」で、アプリケーションが日々の処理で使うデータを保存する仕組みです。
代表的なリレーショナルデータベース製品では、SQLという言語でデータの登録や更新、検索を行い、業務システムの裏側で動いています(出典:PostgreSQL公式サイト) (PostgreSQL)
ざっくり言えば、DWHは「分析用のデータをためる大きな倉庫」、DBは「業務アプリのすぐ裏にある作業机の引き出し」のようなイメージです。
倉庫は出し入れに少し時間がかかってもたくさんの荷物を保管できますが、作業机の引き出しは容量は小さい代わりにすぐ取り出せる、という違いに似ています。
よく使われる代表的なDWHとDBの例
最近はクラウド型のDWHが一般的になってきています。
たとえば、Google CloudのBigQueryはフルマネージドなエンタープライズ向けデータウェアハウスとして提供されており、大量データの分析を想定したサービスです(出典:Google Cloud公式サイト) (Google Cloud)
DBの代表例としては、PostgreSQLやMySQL、各種クラウドDBサービスなどがあります。
これらは受注管理システムや在庫管理システムなどの裏側で、日々のトランザクション処理を支えています。
現場では「業務システムの本番DB」と「分析用DWH」が別々に存在し、
本番DBから夜間バッチやストリーミングでDWHへデータを転送する構成がよく見られます。
更新処理と分析処理という観点での違い
DWHとDBを分けて考えるうえで、更新処理(書き込み)と分析処理(読み取り)のバランスは重要な観点です。
一般的に、業務システムのDBは次のような特徴があります。
日中の時間帯にユーザーや他システムからの更新が頻繁に行われる
一件一件の更新や参照を短時間で処理することが重要である
一方、DWHは次のような特徴を持つことが多いです。
日々または一定間隔でまとめてデータを読み込み、履歴として蓄積する
大量データに対して集計や多次元分析など重めのクエリを実行する
この違いのため、「更新中心」のDBと「分析中心」のDWHは、同じように見えて実はチューニングの方向性がかなり異なります。
一つのDBで両方をこなそうとすると、業務処理が遅くなったり、分析クエリが制限されたりすることがあり、ここが現場でよく問題になるポイントです。
DWHとDBの違いと使いどころを比較する
ここからは、DWHとDBを具体的な利用シーンで比較しながら、どのように使い分けるとよいかを見ていきます。
「結局うちにはDWHが必要なのか」という悩みに答えられるよう、判断基準や典型的なパターンも整理します。
DWHとDBの結論:向いている用途の違い
まずは「どちらがどんな人・どんな用途に向いているか」という観点で結論を整理します。
DBは、日々の業務処理を確実にこなしたい人向けの仕組みです。
受注入力、在庫引当、顧客情報の登録など、いわゆる基幹システムや業務アプリの裏側で使われることが多いです。
「処理が1秒遅れると現場の待ち時間が増える」というような場面では、DBの性能と安定性が特に重要になります。
DWHは、組織全体のデータを横断的に分析したい人向けの仕組みです。
営業、マーケティング、ECサイト、サポートなど複数部門のデータを集め、
「どのチャネルから来た顧客が最終的にどれくらい売上を生んでいるか」といった問いに答えるために活用されます。
「現場の入力を止めずに処理したい」ならDB中心、「全体最適を考えるために横断分析したい」ならDWH中心というイメージで考えると整理しやすくなります。
DWHとDBを選ぶ判断基準(規模・頻度・用途)
DWHを入れるか、DBだけで頑張るかを決めるとき、よく使われる判断基準は次の三つです。
一つ目はデータ量と履歴の長さです。
数年分の詳細ログを保持して傾向を分析したい場合、DB単体ではストレージや性能の面で限界が来やすく、DWHの導入が検討されます。
二つ目は、データソースの数です。
売上、webアクセス、広告、サポート履歴など、複数のシステムからデータを集めて1枚のレポートにしたいのであれば、集約先としてDWHを用意した方が運用は安定しやすくなります。
三つ目は、分析ニーズの頻度と重要度です。
たまに簡単な集計をするだけなら、業務DBから直接レポートを出す運用でも現実的です。
一方で、毎週の経営会議で多角的な分析が求められるような組織では、DWHを前提とした仕組みを整えた方が中長期的にコストを抑えられることが多いです。
現場の感覚としては、「業務DBからの抽出とExcel加工でレポートを回しているが、人手でやるにはそろそろ限界」という段階が、DWH検討の一つの目安になりやすいです。
DWHとDBを組み合わせる典型パターン
実務では「どちらか一方だけ」ではなく、DBとDWHを組み合わせて使う構成が一般的です。
代表的なパターンを二つ挙げます。
一つ目は、「業務システムのDB+分析用DWH」という構成です。
業務システムはDBを中心に設計し、夜間や定期的にDBからDWHへデータを転送して、分析用の基盤を作ります。
経営レポートやダッシュボードはDWHを参照し、現場の業務画面はDBだけを参照するため、それぞれの役割を分けやすくなります。
二つ目は、「SaaSのログなども含めてDWHに集約する」パターンです。
広告配信ツール、MAツール、CRMなどのSaaSからデータを取り込み、
自社システムのDBデータと一緒にDWHに統合することで、マーケティングや顧客分析の精度を高める構成です。
最近のクラウドDWHでは、さまざまな外部サービスとの連携機能やコネクタが提供されており、
「いろいろな場所に散らばっているデータを集める箱」としての役割がより強まっています。
DWHとDBの導入でよくある誤解と注意点
DWHとDBに関して、現場でよく見かける誤解と注意点をいくつか挙げます。
一つ目の誤解は、「DWHを入れれば自動的にデータがきれいになる」という期待です。
実際には、どのデータをどう変換してDWHに格納するかという設計と運用が欠かせません。
元データの品質が悪いままだと、DWHに集めても「きれいなゴミ」が増えるだけになってしまいます。
二つ目の誤解は、「DWHがあれば業務DBはいらない」という考え方です。
DWHは分析に適した構造になっていることが多く、トランザクション処理向きとは限りません。
受注処理や在庫更新など、厳密な整合性とレスポンスが求められる処理は、引き続き業務DBで扱うのが一般的です。
三つ目の注意点は、DWH導入の目的があいまいなまま進めてしまうことです。
「なんとなく先進的だから」「他社もやっているから」という理由だけで始めると、
データはたまっているのに誰も使わない、という結果になりがちです。
どの部門が、どのような指標を、どの頻度で見るのかを事前に整理しておくことが、DWH活用の成否を大きく左右します。
具体例でイメージするDWHとDBの使い分け
イメージをつかみやすくするために、簡単な会話例で見てみます。
営業部長
「来期の予算を立てるから、地域別とチャネル別に過去3年分の売上と利益を見たいんだけど」
システム担当
「今の販売システムのDBには直近1年分しかないので、古いデータはアーカイブから探さないといけません」
営業部長
「毎回それをやっていると、分析結果が出るころには会議が終わってしまうね」
この場面では、過去数年分の履歴を一か所にまとめておきたいというニーズがはっきりしています。
このような場合、販売DBだけで対応するのではなく、DWHを用意して履歴を集約しておく方が適しています。
別の例として、店舗スタッフから次のような相談を受けることもあります。
店舗スタッフ
「お客様のレジ待ち時間を短くしたいので、在庫確認画面の反応をもっと速くできませんか」
このケースでは、画面のレスポンス向上が最優先です。
重い分析クエリを同じDBで実行すると業務処理が遅くなる可能性があるため、
在庫照会などの業務はDB、詳細な分析はDWHと役割を分けることで、両立を図る考え方が一般的です。
DWHとは?DBとの違いと使いどころの整理
ここまでの内容を踏まえて、組織規模ごとの考え方や、よくある質問を整理します。
最後に、要点だけを一覧で確認できるようにまとめます。
小さな組織・小規模システムでの考え方
中小規模の組織や、小さめのサービスでは、「DWHまで本当に必要か」という悩みがよく出てきます。
データ量が少なく、参照元のシステムも一つだけであれば、最初はDBだけで運用する選択肢も現実的です。
たとえば、小規模な予約サイトであれば、予約DBから直接レポートを出し、ExcelやBIツールで簡易分析をするだけで足りる場合もあります。
一方で、次のような兆候が見え始めたら、DWHの検討を始めるタイミングと考えられます。
レポート作成のためのCSV出力と手作業の集計に多くの時間がかかっている
システムが増えてきて、何か分析をしようとすると複数システムの担当者に声をかける必要がある
「データはあるはずだが、どこにあるのか分からない」という会話が増えてきた
現場では、最初から大掛かりなDWHを導入するのではなく、
まずはクラウドDWHを小さく使い始めて、徐々に範囲を広げていく進め方もよく採用されています。
たとえば、特定の部門の分析ニーズに絞って小さく始め、その成果を見てから対象範囲を広げる方法です。
よくある質問
Q
DWHがあれば、レポート用のExcelはなくせますか。
A
一般的には、DWHを導入するとExcelでの集計作業はかなり減らせますが、完全になくなるとは限りません。
BIツールでカバーしきれない細かい加工や、個人の作業スタイルに合わせて一部でExcelが使われ続けることも多いです。
Q
トランザクションDBをそのまま分析に使ってはいけないのですか。
A
小規模なうちはDBだけで分析するケースもあります。
ただし、分析クエリによって業務処理が遅くなったり、履歴の保持期間を伸ばしにくかったりするため、
規模が大きくなるとDWHとの役割分担を検討する流れになることが多いです。
Q
DWHを導入すれば、データ品質の問題も解決しますか。
A
DWHはデータを集約しやすくする仕組みであり、品質そのものを自動的に改善するものではありません。
どのようなルールでデータをクリーニングし、どのタイミングで更新するかを設計し、運用で守っていくことが重要です。
Q
最初にどの部署からDWHを使い始めるのがよいですか。
A
一般的には、定期的なレポートニーズが強く、効果が分かりやすい部署から始めると展開しやすいです。
たとえば、売上分析を行う営業企画やマーケティング部門などが候補になりやすいです。
DWHとは?DBとの違いと使いどころについてのまとめ
・DWHは主に分析用DBは主に業務処理用という役割の違いがある
・DWHは複数システムのデータを集約する箱DBは各システムごとに存在しやすい
・DWHは長期間の履歴をためて傾向を見るのに向きDBは直近データを素早く扱うのに向く
・更新中心の処理はDB分析中心の処理はDWHと考えると整理しやすい
・DWH導入を検討する基準はデータ量履歴の長さデータソース数分析ニーズの強さの三つ
・小規模なうちは業務DBからの直接集計でも運用できる場合がある
・DBとDWHを組み合わせ業務処理と分析基盤の役割を分ける構成が一般的
・DWHを入れてもデータ品質は自動では改善されず変換ルールや運用設計が必要
・DWHがあれば業務DBが不要になるわけではなくトランザクション処理にはDBが適している
・DWH導入の目的はレポートや分析ニーズを具体的に定義してから決めることが重要
・分析のために業務DBへ重いクエリを投げ続けると現場のレスポンス低下につながりやすい
・DWHはクラウドサービスを使って小さく始め効果を見ながら範囲を広げる進め方が現実的
・データがあちこちに散らばり人手でのCSV集計が限界になってきたらDWH検討のサイン
・DWHとDBの違いを理解すると自社に必要な投資規模や優先順位を判断しやすくなる
・最終的には業務のスピードと意思決定の質をどう高めたいかを起点にDWHとDBの役割を設計する
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