会議のたびに「PDCAを回そう」と言われるものの、結局はやりっぱなしで次の会議まで結果も振り返りも曖昧になってしまうことはないでしょうか。
PDCAは有名な言葉ですが、実際の現場では「書類だけのPDCA」になりがちです。
この記事では、PDCAの基本から、回し方のコツ、形骸化を防ぐポイントまでを順番に整理します。
・PDCAの基本的な意味と4つのステップがわかる
・どんな場面でPDCAを使うかの判断基準がわかる
・現場でPDCAをうまく回す具体的なコツがわかる
・PDCAが形骸化する原因と防ぐための工夫がわかる
PDCAの基本を押さえる
この章では、PDCAとは何か、どんな場面で使うと効果的かを整理します。
言葉だけが一人歩きしないように、最低限押さえたいポイントを先に共有します。
そのうえで、自分の仕事やチームにどう当てはめるかを考えていきます。
PDCAの結論と要点3つ
PDCAは、「計画→実行→振り返り→改善」のループで仕事を良くしていく考え方です。
一度きりの「やって終わり」ではなく、同じテーマで何度も回して精度を上げていくのが前提です。
要点は次の3つです。
1つ目は、最初に「何を良くしたいか」を具体的に決めることです。
売上なのか、ミス件数なのか、対応スピードなのか、焦点がぼやけるとPDCAもぼやけます。
2つ目は、小さく早く回すことです。
年単位の大きな計画だけを対象にすると、結果が出るまで時間がかかりすぎてしまいます。
週単位や月単位など短いサイクルでも回せるように分解することが大切です。
3つ目は、「Check」と「Act」を形式で終わらせないことです。
実績を数字で確認し、うまくいった点とうまくいかなかった点を言語化し、次の行動を変えるところまでを1セットと考えます。
PDCAの意味と4つのステップ
PDCAは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字をとったものです。
品質や環境、安全など、さまざまなマネジメントシステムで使われている基本的な管理手法とされています(出典:ISO公式サイト)。 (ISO)
Planでは、目標と指標、具体的な施策、期限や担当者を決めます。
例えば「問い合わせメールの初回返信時間を平均4時間以内にする」といった形です。
Doでは、決めた計画どおりに実行します。
ここでは「やるべきことが本当に実行されたか」を後で確認できるよう、メモやログ、簡単な記録を残しておくとCheckが楽になります。
Checkでは、実績と計画を比較し、差が出た理由を整理します。
「なぜ遅れたか」「どの時間帯なら達成できたか」など、結果だけでなくプロセスにも目を向けることがポイントです。
Actでは、Checkでわかったことをもとに、次回に向けた改善策を決めます。
ここで新しいルールや標準を決めておくと、次のPlanの質が上がりやすくなります。
PDCAを使う場面と判断基準
PDCAをどんな場面で使うかは、次のような基準で考えると整理しやすくなります。
1つ目の判断基準は、継続して行う業務かどうかです。
毎月の営業活動や、毎日の問い合わせ対応など、繰り返し行う仕事ほどPDCAとの相性が良いです。
2つ目は、成果を測れる指標があるかどうかです。
「顧客満足度」「リード件数」「ミス件数」「リリースまでの日数」など、変化を数字や件数で追えるテーマに向いています。
3つ目は、関係者が複数いるかどうかです。
一人で完結する仕事でも使えますが、チームで共有したほうが期待値をそろえやすく、「言った言わない」を減らすことができます。
現場では「とりあえずやってみて、ダメならやめる」という進め方もよく見られます。
その場合も、簡単でよいので「何を見て判断するのか」だけは決めておくと、小さなPDCAとして機能しやすくなります。
他のフレームワークとの違いと併用の考え方
改善のフレームワークには、PDCA以外にもOODAループやKPTなどさまざまな考え方があります。
これらは競合関係というより、焦点の当て方が少しずつ違う道具と捉えると整理しやすくなります。
例えば、OODAは「Observe(観察)→Orient(状況判断)→Decide(意思決定)→Act(行動)」という流れで、変化の激しい環境で素早く意思決定することに重きを置きます。
一方、PDCAは、組織的なマネジメントシステムの継続的改善を前提としたフレームワークとして位置づけられることが多いです(出典:JQA公式サイト)。 (JQA)
日々の短い振り返りではKPTを使い、四半期ごとの大きな見直しではPDCAで整理するなど、目的に応じて組み合わせると、それぞれの強みを活かしやすくなります。
大事なのは、どのフレームワークを使うかよりも、関係者の認識をそろえて継続的に改善していくことです。
PDCAを現場でうまく回すコツ
ここからは、実際の現場でPDCAをどう回すかについて、手触りのあるコツを見ていきます。
「やろうとはしたが続かなかった」という経験がある人でも、少し工夫するだけで回り方が大きく変わります。
日々の業務に無理なく組み込むイメージで読み進めてみてください。
最短で回すシンプルな進め方
現場でよく見られるのは、いきなり完璧なPDCAを目指して重いフォーマットを作り、書くだけで疲れてしまうパターンです。
最初は「1枚メモレベルのPDCA」から始めるくらいがちょうどよいです。
例えば、新しいメールテンプレートを改善したい場合の流れは次のようになります。
まずPlanで「返信にかかる時間を平均10分から7分にする」「誤字脱字ゼロを目指す」などの目標と期間を決めます。
Doで、1週間だけ新テンプレートを使い、対応件数と時間をざっくり記録します。
Checkで、実際の平均時間を集計し、「複雑な問い合わせだとテンプレがかえって読みにくい」など気づいた点を箇条書きにします。
Actで、「複雑な問い合わせにはテンプレの後半を削る」など、次回のルールを1つか2つだけ決めます。
このように、短期間・小さな範囲で回すことが、現場で定着させる近道です。
慣れてきたら、対象を拡大したり、指標の精度を上げていけばよいです。
計画(Plan)で押さえるべきポイント
PDCAがうまくいかないケースの多くは、Planの段階で曖昧さが残っていることが原因です。
Planでは、最低限次の3点を明確にします。
1つ目は、目的とゴールの違いをはっきりさせることです。
例えば目的は「顧客満足度を高めること」、ゴールは「次の3か月でアンケートの満足度スコアを0.3ポイント上げる」など、時間や数字を入れて具体化します。
2つ目は、測る指標を1〜3個に絞ることです。
指標を多くしすぎると、何が良くて何が悪いのかわからなくなります。
「対応時間」「一次回答率」「エスカレーション率」など、優先度の高いものだけに絞ると、振り返りがしやすくなります。
3つ目は、「やらないこと」を決めることです。
新しい施策を増やすだけでは、現場の負荷が上がるばかりです。
「この期間は新しいチャネル開拓はしない」など、手を付けない領域を先に決めておくと、集中しやすくなります。
現場では、上長がざっくりとした指示だけを出し、メンバーが各自の解釈で動くケースが少なくありません。
そのようなときこそ、Planの場で指標と優先順位を共有し、期待値をそろえることが重要です。
実行・振り返りでつまずきやすい点
DoとCheckの段階では、次のようなつまずきがよく見られます。
1つ目は、実行結果の記録が残っていないことです。
「頑張りました」だけではCheckができません。
すべてを精緻にログ化するのではなく、「日別の大まかな件数と所要時間」など、最低限の記録だけでも残しておくと、振り返りの質が大きく変わります。
2つ目は、Checkが「反省会」になってしまうことです。
「なぜできなかったのか」を個人の努力不足に結びつけると、次第に本音が出にくくなります。
数字や事実をもとに、「どの時間帯に遅れが出たか」「どの条件の案件で時間がかかったか」など、プロセスに視点を向けることが判断基準になります。
3つ目は、Actが具体的な行動に落ちていないことです。
「次はもっと気をつけよう」「頑張ろう」で終わると、実質的には同じDoの繰り返しになります。
「テンプレートの冒頭3行を短くする」「朝一番に優先度の高い案件から着手する」など、行動レベルまで落とし込むことが重要です。
「この数字、どうして達成できなかったの」と上司が問い、メンバーが「頑張ったんですが……」と答えるだけのやり取りは、現場でよく見かけます。
そのような場面では、「どの条件のときにうまくいったか」「それを増やすには何ができるか」という対話に切り替えるだけで、CheckとActの質が上がります。
チームでPDCAを回すときの工夫
チームでPDCAを回す場合、個人の努力に頼るだけでは続きにくくなります。
仕組みとして組み込む視点が大切です。
1つ目の工夫は、振り返りの頻度と時間をあらかじめ決めておくことです。
例えば「毎週金曜日の30分は必ずCheckとActに使う」と決めてしまうと、忙しさに流されにくくなります。
2つ目は、数字と具体例をセットで共有することです。
「平均対応時間が1時間短くなった」という数字だけでなく、「このやり方を試したら、急ぎの案件でも焦らず処理できた」といった実例を出し合うことで、チーム内に良いパターンがたまりやすくなります。
3つ目は、「誰が悪いか」ではなく「どう変えるか」に焦点を当てる文化をつくることです。
改善の場が責任追及の場になると、メンバーは本音を話しにくくなります。
「仕組みをどう変えるか」「ルールをどう見直すか」に話題を寄せることが、PDCAを長く続ける判断基準になります。
現場では、リーダーが一人でPDCAを抱え込み、メンバーには「やっておいて」とだけ伝えるケースもよくあります。
その場合、リーダーだけが疲弊しやすく、メンバーには「また上から降ってきた施策」と映りがちです。
早い段階からメンバーを巻き込み、「この指標でやってみよう」「このルールはやめよう」といった議論を共有することで、チーム全体のPDCAとして機能しやすくなります。
PDCAが形骸化する原因と防ぐポイント
最後に、PDCAが形骸化してしまう典型パターンと、その防ぎ方を整理します。
多くの組織で共通して起きやすいポイントなので、自分の環境に当てはめながらチェックしてみてください。
ここで挙げる対策は、業種や規模を問わず応用しやすいものを中心にまとめています。
形骸化が起きるパターンとサイン
PDCAの形骸化には、いくつか共通したパターンがあります。
1つ目は、書類やフォーマットを埋めることが目的化するパターンです。
月次の報告書やPDCAシートを提出すること自体が目的になり、現場の行動が変わっていない場合は要注意です。
2つ目は、Planだけが詳細で、DoやCheckが実質的に行われていないパターンです。
計画だけ立派で、実行の記録も振り返りの場もないと、PDCAというよりPだけの運用になってしまいます。
3つ目は、Actが次のPlanに反映されていないパターンです。
会議で改善案は出るものの、次の月にはまた元のやり方に戻っている場合、「決めたことを標準に反映する」仕組みが弱いサインです。
マネジメントシステムの分野でも、PDCAは形だけ整えても実際の改善につながらないという指摘がされています。
そのため、BCPや情報セキュリティなどの規格でも、運用と改善のサイクルを通じて実効性を高めることが重要とされています(出典:東京海上日動リスクコンサルティングのレポート)。 (トキオドクター)
形骸化を防ぐための判断基準
形骸化を防ぐには、「このPDCAは生きているか」を判断する基準を持っておくと役に立ちます。
例えば、次の3つの問いかけが目安になります。
1つ目は、「この3か月で具体的に何が変わったか」です。
ルールでも、手順でも、使うツールでも構いません。
何かしら「前とは変わった」と言える点がなければ、PDCAが形だけになっている可能性が高いです。
2つ目は、「現場の負荷は全体として減っているか」です。
改善のたびにチェック項目や作業が増える一方だと、現場は疲弊します。
新しいルールを増やしたら、どれか古いものをやめるなど、トータルの負荷を意識することが重要です。
3つ目は、「失敗を共有しやすい雰囲気があるか」です。
PDCAは失敗を前提とする仕組みとも言えます。
失敗事例を出しにくい雰囲気だと、Checkが表面的になり、本当の課題が見えにくくなります。
現場では、追加資料や報告フォーマットだけが増え、「前より仕事がやりにくくなった」という声が聞かれることがあります。
そのような場合、「このルールは誰の何を楽にしているか」という視点で見直すことが、PDCAを実務に根付かせるうえでの重要な基準になります。
業務に根付かせるための実践例
PDCAを業務に根付かせるには、日々の仕事の流れと切り離さないことがポイントです。
ここでは、実務でよく見られる実践例をいくつか挙げます。
1つ目は、既存の定例会議をCheckとActの場に変えることです。
すでにある週次ミーティングや朝会に、「先週の数値」「うまくいった例」「次に変えること」を共有する時間を10〜15分だけ組み込む方法です。
新しい会議を増やさないため、現場の負担が大きくなりにくいのが利点です。
2つ目は、タスク管理ツールやスプレッドシートと連動させることです。
日々のタスクの中に「Plan」「Do」「Check」「Act」のラベルを付けるだけでも、どのタスクがどの段階かが見えるようになります。
「Checkが溜まりすぎている」「Actが少ない」といった偏りも把握しやすくなります。
3つ目は、ロールプレイや会話例を使って改善を共有することです。
例えば、カスタマーサポートの現場では、次のような会話例を使って振り返ることがあります。
担当者A
「このフレーズに変えたら、お客様からの追加質問が減りました」
担当者B
「その言い回し、チャット対応にも使えそうですね。明日から真似してみます」
このように、具体的な言い回しや対応例を共有することで、「次にどう変えるか」がイメージしやすくなります。
現場では、こうした小さな共有を積み重ねているチームほど、PDCAが自然と回っているケースが多く見られます。
マネジメントシステムの規格でも、PDCAサイクルを通じて継続的改善を行うことが重視されています(出典:ISMS解説サイト)。 (LRM株式会社 | 情報セキュリティの総合コンサルティング会社)
同じように、自社のルールやチームの運用も「一度決めたら終わり」ではなく、PDCAで少しずつ現場に合う形に整えていくことが大切です。
よくある質問
Q1.PDCAとOODAループはどちらを使えばよいですか。
どちらが優れているというより、目的に応じて使い分けるイメージが適しています。
変化の激しい現場で素早く意思決定したい場面ではOODA、組織的にルールやプロセスを整えたい場面ではPDCAが向いていることが多いです。
Q2.小さなチームや少人数でもPDCAは必要ですか。
人数が少ないほど、1人の動きが結果に与える影響が大きくなります。
すべてを形式的に行う必要はありませんが、「目的と指標を決める」「結果を一度は振り返る」といった最低限のPDCAを入れておくと、認識のズレを減らしやすくなります。
Q3.数字で評価しにくい業務ではどうすればよいですか。
完全な数値化が難しい場合でも、「対応件数」「問い合わせ種別」「完了までの日数」など、部分的に数字で追えるところを探すのがおすすめです。
合わせて、具体例やお客様の声など、定性的な情報も記録しておくと、Checkの材料が増えます。
Q4.PDCAがなかなか続きません。どこから見直すべきですか。
多くの場合、負荷が高すぎるか、効果が見えにくいことが原因です。
フォーマットを簡略化し、期間を短くし、成果の出やすいテーマから始めることで、「やれば変わる」という実感を持ちやすくなります。
PDCAの回し方と形骸化防止のまとめ
・PDCAは計画実行振り返り改善を繰り返す枠組み
・継続する業務と測れる指標があるテーマに向く
・まずは一枚メモ程度の小さなPDCAから始める
・Planでは目的ゴール指標やらないことを明確にする
・Doでは実行した事実を簡単でもよいので記録する
・Checkは個人批判でなくプロセスに目を向けて行う
・Actでは次に変える具体的な行動を一つ以上決める
・会議や定例ミーティングにCheckとActを組み込む
・指標と具体例をセットで共有し良いパターンを貯める
・資料作成だけが目的化していないかを定期的に確認する
・三か月で何が変わったかを形骸化チェックの基準にする
・新ルールを増やしたら何かをやめて負荷を調整する
・失敗を安心して共有できる雰囲気づくりを意識する
・既存ツールや会議体と連動させ業務に溶け込ませる
・小さな成功体験を共有しPDCAを続ける動機を高める
