新しいプロジェクトの説明会で、部署ごとに言うことが違い、会議が長引くだけで結論が出ない場面に困っていませんか。
ステークホルダーごとに関心事や心配事が違うと、同じ資料を見ても受け取り方が変わるため、合意形成の進め方を意識的に設計する必要があります。
この記事では、ステークホルダーとの合意形成を、現場で使いやすいステップに分解して解説します。
・ステークホルダーとの合意形成を最短ルートで進める考え方
・合意形成前に準備しておくべき前提と確認ポイント
・会議や打ち合わせで使える具体的なステップと工夫
・対立や行き詰まりを防ぐための注意点と再発防止策
ステークホルダーとの合意形成を進める全体像
ステークホルダーとの合意形成をスムーズに進めるには、いきなり会議を開くのではなく、事前の整理と個別の対話を重ねることが重要です。
誰が何を気にしているのかを把握し、共通のゴールに結び付けていく「準備」と「段取り」が、結果的に最短ルートになります。
ここでは、合意形成の考え方と、準備段階で押さえておきたいポイントを整理します。
合意形成をスムーズに進める結論イメージ(最短のやり方)
合意形成を最短で進めるための結論は、次の3点に集約できます。
- 先に利害と期待を可視化しておく
- キーパーソンから順に個別合意を積み上げる
- 会議の場ではすり合わせと確認に集中する
例えば、システム刷新プロジェクトで、経営層は「コスト削減」、現場は「業務負荷の軽減」、情報システム部門は「セキュリティ確保」を重視しているとします。
このとき、最短ルートは「全員に同じ説明をして、賛成を集める」ことではなく、「それぞれが重視する観点をあらかじめ聞き取り、共通ゴールに整理してから会議に臨む」ことです。
現場では、キーパーソンへの根回しや事前説明を丁寧に行ったプロジェクトほど、公式な会議が短く済み、決定事項もスムーズに実行されることが多いです。
合意形成の前に押さえるべき前提と準備
合意形成を始める前に、最低限そろえておきたい前提と確認ポイントがあります。
前提として整理しておくこと
・プロジェクトや施策の目的
・今回合意したい範囲と今後検討する範囲
・意思決定の最終責任者と承認フロー
・スケジュール上の制約(いつまでに何を決めるか)
環境によって確認しておきたいポイント
・組織の文化(トップダウンが強いか、ボトムアップ重視か)
・関係する部署の数と影響度
・組合や協議会など正式な合意手続きの有無
・社外ステークホルダー(取引先、顧客、行政など)の関与の有無
これらを整理しておくと、そもそも誰にどこまで説明すればよいのか、どの順番で合意をとっていくべきかという判断がしやすくなります。
関係者とステークホルダーの洗い出し方
ステークホルダーとは、プロジェクトの影響を受ける人、または結果に影響を与える人のことです。
現場では、目の前のメンバーだけを想定してしまい、本来関係する部署や社外の関係者を後から思い出して慌てるケースが少なくありません。
洗い出しのコツは、次のような観点で考えることです。
・意思決定者(経営層、部門長など)
・日々の運用を担う現場メンバー
・システムや仕組みを管理する部門
・取引先やパートナー企業
・顧客や利用者
・行政機関や地域コミュニティなどの公的な関係者
例えば、「新しい勤怠ルールを導入する」というテーマなら、人事部門だけでなく、各部門長、現場リーダー、システム担当、場合によっては労働組合や社外システムベンダーもステークホルダーになります。
利害と期待を整理するためのヒアリング
ステークホルダーを洗い出したら、それぞれの利害と期待を整理します。
この段階では、細かい解決策を提案するよりも、何が心配か、何を期待しているかを聴き切ることが重要です。
会話例としては、次のような質問が役立ちます。
「この施策が実現したとき、どんな良いことがあると感じますか」
「逆に、不安に感じることや、困りそうな点はありますか」
ヒアリング内容は、メモやシートにまとめておくと、後の会議で「この懸念は事前に伺っており、こう整理しています」と説明できます。
多くの自治体のまちづくりガイドラインでも、ステークホルダーとの信頼関係構築には、早い段階での情報共有と意見聴取が重要とされています。
(出典:横浜市 住民合意形成ガイドライン 公式サイト)(横浜市公式サイト)
ステークホルダーとの合意形成の具体的な進め方
ここからは、実際に合意形成を進める具体的なステップを見ていきます。
会議の場に入る前の準備、会議中の進め方、合意後のフォローまでを一連の流れとして押さえることで、対立ややり直しを減らすことができます。
現場でよく起きるつまずきパターンと、その回避策もあわせて解説します。
合意形成の基本ステップ(手順)
合意形成の基本的な流れを、シンプルな手順に整理すると次のようになります。
- 目的と合意したい範囲を明文化する
- ステークホルダーを洗い出し、影響度と関心事を整理する
- キーパーソンへの個別説明と意見聴取を行う
- 共通のゴールと論点整理を行う
- 会議やワークショップで案をすり合わせる
- 最終案を確認し、合意事項と保留事項を書面化する
- 合意後のフォローと振り返りを行う
例えば、社内のテレワーク制度を見直す場合、「対象者」「頻度」「評価方法」など論点が複数あります。
このとき、先に「今回の会議では制度の方向性までを決め、細かい運用ルールは次回以降に検討する」と範囲を区切っておくと、議論が散らかりにくくなります。
会議や打ち合わせでの進行のコツ
会議や打ち合わせの場では、説得よりも整理とすり合わせに徹することがポイントです。
特に重要なのは、次の3つです。
・冒頭で目的とゴールを明示する
・論点ごとに時間を区切り、発言を見える化する
・決まったことと決まっていないことを最後に整理する
会議冒頭での一言を工夫するだけでも、場の雰囲気は大きく変わります。
「今日はテレワークの是非を白黒つける場ではなく、方針の方向性をそろえることが目的です」
と伝えることで、極端な賛否の議論から、条件付きでの合意点を探りやすくなります。
多くの企業向け研修でも、合意形成の場ではファシリテーター役の存在と、議事録や板書による見える化が有効とされています。
(出典:株式会社インソース 調整力発揮研修 公式サイト)(insource.co.jp)
つまずきやすい場面と原因別の対処法
合意形成では、いくつか典型的なつまずきパターンがあります。
症状、原因、対処をセットで見ていきます。
パターン1
症状:会議で反対意見ばかり出て、議論が前に進まない
原因:目的やメリットよりも、リスクや負担ばかりが意識されている
対処:目的と期待される成果を改めて共有し、合意できる条件を具体的に質問する
例
「この案を受け入れられるとしたら、どの条件がそろう必要がありますか」
「どの部分を修正すれば、前向きに検討できそうでしょうか」
パターン2
症状:会議後になってから、影響力のある人が反対し、決定がひっくり返る
原因:キーパーソンへの事前説明や個別合意が不十分だった
対処:次回からは、会議前にキーパーソンへ背景と案を共有し、懸念点を事前に聞いておく
パターン3
症状:メンバーごとに理解がバラバラで、現場での運用が定着しない
原因:合意した内容が言語化されておらず、人づてにあいまいに伝わっている
対処:合意事項をシンプルな文書やチェックリストにまとめ、説明のブレを減らす
現場では、何度も会議を重ねているのに、最後の「誰が、いつまでに、何をするか」が曖昧なまま終わるケースが目立ちます。
合意形成のゴールは納得の署名ではなく、現場で行動が変わることと意識しておくと、対処の方針が選びやすくなります。
対立を再発させないための工夫と失敗回避のポイント
一度合意しても、時間が経つと「聞いていない」「そんな約束はしていない」という対立が再発することがあります。
これを防ぐには、次のような工夫が有効です。
・合意事項を1ページ程度のシンプルな文書にまとめる
・関係者全員に配布し、この内容でよいかをメールなどで確認する
・合意内容に期限や見直し時期をあらかじめ書いておく
・変更が必要になったときの手順(誰がどう提案するか)を決めておく
合意形成に関する多くの実務書でも、合意事項の見える化と定期的な振り返りの重要性が指摘されています。
(出典:パブリック・ハーツ株式会社 合意形成実務のガイダンス 公式サイト)(publichearts.com)
経験的にも、合意事項を図やフローで示し、半年後に振り返りの場を設けている組織では、「あのとき決めたはずなのに」という不満が起きにくい傾向があります。
合意形成に関するよくある質問
Q1.全員が納得するまで決めない方が良いですか
A.全員の完全な賛成を待つと、決定が極端に遅くなることがあります。
多くの場合、大きな反対がない状態や条件付きの賛成を目指し、最終責任者が判断する形が現実的です。
Q2.時間がないときは、事前ヒアリングを省いても良いですか
A.時間がないときほど、最低限のヒアリングだけでも行った方が結果的に早く終わるケースが多いです。
後からの反対ややり直しは、結局より大きな時間ロスにつながります。
Q3.意見が真っ二つに割れた場合はどうすれば良いですか
A.どちらの案かだけでなく、何を優先するかを確認することがポイントです。
コスト、安全性、スピードなどの優先順位が合えば、第3の案が見つかることも少なくありません。
Q4.オンライン会議でも同じやり方で大丈夫ですか
A.基本の考え方は同じですが、チャットや投票機能を使って意見を見える化すると、発言しづらい人の声も拾いやすくなります。
画面共有で論点を整理しながら進めると効果的です。
ステークホルダーとの合意形成の進め方についてのまとめ
・合意形成は会議当日ではなく準備段階から始まっていることを意識する
・最短ルートは全員に一度で説明することではなく事前の個別対話である
・ステークホルダーは影響を受ける人と結果に影響を与える人の両方を含めて洗い出す
・目的と合意したい範囲を言語化し今回決めることと今後の検討事項を分ける
・意思決定者と現場担当者など立場ごとの関心事と懸念を事前ヒアリングで把握する
・キーパーソンから先に個別合意を積み上げ会議ではすり合わせに集中する
・会議冒頭で目的とゴールを明示し論点ごとに時間と議論の枠を区切る
・決まったことと決まっていないことを最後に整理し合意事項を簡潔な文書に残す
・反対意見には否定ではなく条件付きで受け入れられるポイントを質問して探る
・決定をひっくり返されないよう会議前にキーパーソンへ背景と案を丁寧に説明する
・合意事項に見直し時期や変更手順を書き再び対立したときの道筋を用意しておく
・オンライン会議ではチャットや投票機能で意見を見える化し発言しづらい人の声を拾う
・合意形成のゴールは署名や承認ではなく現場の行動が変わる状態である
・定期的な振り返りの場を設け合意内容と実際の運用のギャップを確認する
・全員の完全な賛成よりも大きな反対がない状態と責任ある最終判断を目指す
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