コロナ禍以降、「テレワーク」「リモートワーク」という言葉を耳にする機会が一気に増えました。
一方で、「会社の規程にはテレワークと書いてあるのに、現場はみんなリモートって言っている」「在宅勤務や在宅ワークとの違いもよくわからない」というモヤモヤを抱えている方も多いのではないでしょうか。
実は、テレワークとリモートワークは、やっていること自体はほとんど同じでも、使われる場面やニュアンスが少しずつ違います。
この微妙な違いを押さえておくと、求人票を読むときや、社内メールを書くとき、上司や同僚と会話するときに、「この言い方で合っているかな?」と不安になることが減っていきます。
この記事では、難しい専門用語や法律の細かい話に入りすぎないようにしながら、テレワークとリモートワークの違いと共通点、そしてビジネスの場での自然な使い分け方をわかりやすく整理していきます。
・テレワークとリモートワークの基本的な意味と、よく使われる場面の違い
・在宅勤務・在宅ワークとの関係性と、言葉を混同しないための考え方
・実際の社内メールや会話、求人票での自然な使い分け方のイメージ
・相手や状況に合わせて、どの言葉を選べばよいか判断するためのヒント
基礎理解・前提
まずは、「テレワーク」と「リモートワーク」という言葉がどのような場面で使われ、どんなイメージを持たれているのか、土台となる部分から整理していきます。
日本の行政や大企業での定義から、IT業界・現場でのカジュアルな使われ方まで、周辺の用語も含めて全体像をつかみましょう。
結論:テレワークとリモートワークの違いを一言でいうと
•テレワーク:会社や行政が使う、制度・仕組みとしての「場所や時間にとらわれない働き方」
•リモートワーク:社員やIT業界が使う、スタイルとしての「オフィス以外で働くこと」
ざっくり言うと、テレワークは「制度名」寄りの言葉、リモートワークは「働き方の言い方」寄りの言葉です。
やっていること(自宅やカフェでパソコンを開いて仕事をする)は同じでも、どの立場の人が、どんな文脈で話すかによって、使われる言葉が変わります。
例えば、会社からの通知メールでは「テレワーク制度を導入します」と書かれやすく、
現場のエンジニア同士の雑談では「明日はリモートです」とカジュアルに使われることが多いです。
この記事では、こうしたニュアンスの違いを整理しながら、「どっちを使えばいいのか」をスッキリさせていきます。
テレワークとは?日本での定義と使われ方
「テレワーク」は、もともとtele(離れた場所)+work(働く)を組み合わせた言葉で、
日本では総務省などの行政機関が「テレワーク推進」といった形で使ってきた経緯があります。
公的な説明では、
- 自宅で働く「在宅型テレワーク」
- 外出先のカフェやサテライトオフィスで働く「モバイルワーク」
- 会社以外の専用オフィスで働く「サテライトオフィス勤務」
などを全部まとめて「テレワーク」と呼ぶことが多いです。
会社の社内規程や、人事制度の説明資料などでは、
- テレワーク勤務規程
- テレワーク手当
- テレワーク対象者
のように、制度としての名称に使われやすいのが特徴です。
会議で部長クラスが「当社のテレワーク制度についてですが…」と話しているときは、
たいてい「会社としてどう認めるか」「ルールをどうするか」という、仕組み側の話をしていると考えるとわかりやすいです。
リモートワークとは?IT業界・海外での使われ方
一方「リモートワーク」は、英語圏で一般的なremote workから来ていて、
特にIT企業やスタートアップ、フリーランス界隈でよく使われる言葉です。
こちらは、どちらかというと現場目線の働き方の呼び方で、
- 明日はリモートにします
- フルリモートOKの求人です
- チームはフルリモートで開発しています
のように、「どこで働くか」「オフィスに行くかどうか」をカジュアルに表現する場面で使われます。
海外では、
- remote work
- work from home(在宅勤務)
- hybrid work(出社とリモートの組み合わせ)
といった言い方がされますが、日本のIT業界では、このあたりがまとめて「リモートワーク」と呼ばれているイメージです。
「テレワーク制度の有無」よりも、「今日は物理的にオフィスにいるかどうか」を示すニュアンスが強いと思っておくと混乱しにくくなります。
テレワークとリモートワークの共通点
もちろん、テレワークとリモートワークには共通点もたくさんあります。
言葉は違っても、現場でやっていることはほとんど同じ、というケースも珍しくありません。
共通点をざっくり挙げると、
- どちらも「オフィス以外で働くスタイル」を含む
- パソコン・ネット環境・オンライン会議ツールなどを前提とした働き方
- 通勤時間が減る一方で、自己管理やコミュニケーションの工夫が求められる
- 会社としてルールが決まっていないと、社員側も不安になりがち
などです。
たとえば、あなたが在宅でメール対応や資料作成をしているとき、
人事からは「テレワーク利用者」と呼ばれ、チームメンバーからは「今日はリモートなんですね」と言われるかもしれません。
ラベルは違っても、「同じ状況を別の角度から呼んでいるだけ」ということが多いのです。
在宅勤務・在宅ワークとの関係と違い
ここで混乱を招きやすいのが、「在宅勤務」「在宅ワーク」という言葉との関係です。
ざっくり整理すると、
- テレワーク:場所にとらわれない働き方の総称(自宅・サテライトオフィス・移動中など全部含む)
- リモートワーク:オフィス以外で働く状態全般を指す、カジュアルな呼び方
- 在宅勤務:会社に雇われていて、自宅を勤務場所とする働き方(雇用契約ベース)
- 在宅ワーク:クラウドソーシングなども含む、自宅で行う仕事全般(業務委託・副業なども含むことが多い)
たとえば、
- 正社員として、会社の「在宅勤務制度」を使って自宅で働く → 在宅勤務(テレワークの一種)
- ライターとして、クラウドソーシングで案件を受けて自宅で作業する → 在宅ワーク(業務委託)
となります。
コンビニのレジとスーパーのレジが似ているように、言っていることは似ていても、
雇用契約なのか、業務委託なのか、社内制度の名前なのかで、微妙に意味が変わる点に注意が必要です。
日本で「テレワーク」が行政・大企業で使われやすい理由
日本では、コロナ禍以前から行政が「テレワーク推進」として、
働き方改革や地方創生の文脈でこの言葉を使ってきました。
そのため、
- 総務省や厚生労働省の資料
- 大企業の人事制度・就業規則
- 経団連の提言や白書
など、公的・フォーマルな文書では「テレワーク」が好まれやすい傾向があります。
会社の立場から見ると、
- サテライトオフィス勤務も含めた広い概念として使いやすい
- 補助金や助成金の制度が「テレワーク導入」を前提にしていることが多い
- 「公的に認められた言葉」を使うことで、社外説明もしやすい
といったメリットがあります。
例えば、社内メールで「当社ではテレワーク制度を導入します」と書くと、
経営会議や労働組合とのやり取りでも、行政の用語と揃えられるため、通りが良いのです。
ベンチャー企業やフリーランス界隈で「リモートワーク」が好まれる背景
一方で、ベンチャー企業やITスタートアップ、フリーランス界隈では、
「うちのチームはフルリモートです」「リモートOKの会社で働きたい」といった表現がよく見られます。
背景としては、
- 海外の情報源(英語の記事やTwitterなど)で”remote work”という言葉に触れることが多い
- 「テレワーク」という言葉が、少しお役所っぽく、固いイメージを持たれがち
- 「リモートの方がカジュアルで、自分たちらしい」と感じる人が多い
といった事情があります。
また、フリーランス同士の会話では、
- 「今の案件、フルリモートでやってます」
- 「週2出社、残りはリモートですね」
のように、出社頻度や働く場所を説明する文脈で使われます。
会社の就業規則では「テレワーク勤務」と書きつつ、
現場のスラックでは「明日リモートで参加します」と書かれる、というギャップもよくある光景です。
違いの整理・使い分け
基礎的な意味がわかったところで、実際のビジネスシーンでどう言い分ければよいのかを具体的に見ていきます。
比較表やよくある会話例、勘違いしやすいポイント、FAQを通じて、迷いがちな場面でも自信を持って言葉を選べるようになることを目指します。
テレワークとリモートワークの違いを一覧表で比較(ニュアンス・使われる場面)
ここまでの内容を、一覧表で整理してみます。
| 観点 | テレワーク | リモートワーク |
|---|---|---|
| 由来 | tele + work(離れた+働く) | remote work(遠隔で働く) |
| 使われやすい場面 | 行政文書、人事制度、就業規則 | 日常会話、IT業界、求人広告 |
| ニュアンス | 制度名・仕組み・働き方改革 | 働く場所・スタイルの説明 |
| 対象範囲 | 在宅・サテライト・モバイルなど広く含む | オフィス外での業務全般 |
| 使い手のイメージ | 人事・総務・経営層 | エンジニア・クリエイター・現場メンバー |
| 日本語/英語感 | カタカナ和製英語感が強め | 英語に近く、カジュアル |
表で見ると、実態の働き方よりも、「どの立場から話すか」で言葉が変わることがわかります。
社内規程を作る人は「テレワーク」、
日々のチャットや会議では「リモート」、という使い分けをしている会社も多いです。
よくあるシーン別:社内制度としてのテレワーク/働き方としてのリモートワーク
よくあるシーンで、言葉の使われ方を見てみましょう。
シーン1:人事からの案内メール
件名:テレワーク勤務制度導入のお知らせ
本文:4月より、一部部署を対象にテレワーク勤務制度を導入いたします。対象者は週2日まで在宅勤務を認めます。
ここでは、「制度名」としてテレワークが使われています。
シーン2:チームのチャット(Slackなど)
Aさん「明日の定例、私はリモート参加でお願いします」
Bさん「了解です!会議室とZoom両方つなぎます」
ここでは、「明日はオフィスにいない」という状態をカジュアルに伝えるために、リモートが使われています。
シーン3:求人広告
「フルリモートOK」「リモートワーク可」「一部テレワーク制度あり」
最近の求人では、「リモートワーク可」がよく使われますが、
企業側の正式な制度名は「テレワーク勤務」となっていることも少なくありません。
つまり、社内制度=テレワーク/日常会話=リモートワークという使い分けが、実務ではよく見られるのです。
実務での会話例:会議・求人・社内メールでの使い分け
具体的な会話例をいくつか挙げてみます。
会議での例
部長「来期からテレワーク制度を見直したいと考えています。」
メンバー「そうなると、週3リモートで開発しているチームは、影響が大きそうですね。」
ここでは、部長は制度の話をするので「テレワーク」、
メンバーは普段の働き方の話をするので「リモート」と言い分けています。
求人作成時の例
人事「求人票には“テレワーク勤務制度あり”と書きつつ、タイトルには“リモートワークOK”と入れましょう。」
求職者側がよく検索するのは「リモートワーク」ですが、
社内の正式名称としては「テレワーク制度」のため、両方使うパターンです。
社内メールの例
- フォーマルな連絡:「テレワーク利用時のルールについて再度ご案内します。」
- 日常的なやり取り:「本日、子どもの体調不良のためリモートで参加させてください。」
同じ会社の中でも、相手やシーンによって自然に言い分けていることがわかります。
初心者がよくするテレワークとリモートワークの勘違い
最後に、初心者がしがちな勘違いを整理しておきます。
勘違い1:テレワークとリモートワークは、法律的に全く別物
→ 実は、法律で「テレワーク」「リモートワーク」と厳密に区別されているわけではありません。
どちらも「場所にとらわれない働き方」を指す言葉であり、企業や行政が文脈に応じて使い分けているに過ぎません。
勘違い2:テレワークは在宅だけ、リモートワークはカフェでの作業だけ
→ これも誤解されやすいポイントです。
テレワークもリモートワークも、「自宅だけ」「カフェだけ」に限定された言葉ではありません。
在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークなどを含んだ、広い概念です。
勘違い3:リモートワークって言うと、軽く見られそうだからNG
→ 多くの現場では、単にカジュアルな言い方として使われているだけです。
逆に、スタートアップやIT企業では「テレワーク」という言葉のほうが、少し古く感じられることもあります。
大事なのは、相手や場面に合わせて言葉を選ぶことです。
テレワークとリモートワークに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 上司にはどちらの言葉を使うのが良いですか?
A. 会社の制度名が「テレワーク勤務」の場合、
人事や上司に正式な相談をするときは「テレワークを利用したいです」と言ったほうが通じやすいです。
一方、チームメンバーとの日常会話では、「明日はリモートで参加します」のように、自然なほうを使って大丈夫です。
Q2. 履歴書や職務経歴書には、どの表現を使えば良いですか?
A. 迷ったときは、「リモートワーク(テレワーク)経験あり」のように、両方を併記するのがおすすめです。
応募先の求人票に「リモートワーク可」とあればそれに合わせ、
「テレワーク制度あり」とあればそちらに揃えると、より読み手に親切です。
Q3. 在宅ワーク(副業)もテレワーク・リモートワークと呼べますか?
A. 「広い意味では」そう呼べる場合もありますが、
会社員としての在宅勤務と、業務委託の在宅ワークは、契約形態がまったく違います。
紛らわしい場面では、「正社員として在宅勤務」「副業で在宅ワーク」のように、少し具体的に書いたほうが誤解が少なくなります。
まとめ:ビジネスの場でテレワークとリモートワークをどう使い分ければよいか
最後に、テレワークとリモートワークの使い分けのポイントをまとめます。
- 制度・ルールの話をするとき
→ 「テレワーク勤務制度」「テレワーク利用ルール」など、テレワークを使うとフォーマルに聞こえます。 - 日々の働き方・出社状況を伝えるとき
→ 「今日はリモートです」「フルリモートで働いています」など、リモートワークのほうが自然なことが多いです。 - 社外・求人向けに発信するとき
→ 求職者の検索キーワードに合わせて「リモートワーク可」としつつ、
詳細欄には「当社テレワーク制度に基づき実施」と書くなど、両方の言葉をうまく併用すると親切です。
大切なのは、「どっちの言葉が正解か」で悩みすぎることではなく、
相手・場面・文書のトーンに合わせて、テレワーク/リモートワークを選び分けることです。
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