「副業解禁」「複業歓迎」といった言葉を、ニュースや求人で見かけることが増えてきました。
一方で、「副業と複業って何が違うの?」「どっちを目指すべきなの?」と、モヤっとしている方も多いはずです。
どちらも「ひとつの会社だけに頼らない働き方」という点では共通していますが、
お金のための“サブの仕事”なのか、キャリアを広げる“もう一つの本業”なのかで、考え方が大きく変わります。
この記事では、副業と複業の違い・共通点・よくある勘違いを整理しながら、
あなたの今の状況に合った働き方のヒントをお伝えしていきます。
・副業と複業という言葉の意味と、ざっくりとした違い
・収入面・時間の使い方・キャリアへの影響の違い
・実務でのよくあるシーンや求人表現の読み解き方
・自分は副業・複業どちらを目指すとよさそうかの考え方
基礎理解・前提
まずは、「副業」と「複業」という言葉の基本的な意味をそろえていきます。
なんとなく同じように使われがちですが、「収入を補う仕事」と「キャリアを増やす仕事」という違いがあります。
ここでは、定義・共通点・背景を押さえながら、土台となる認識を整理していきましょう。
結論:副業と複業の違いを一言で説明すると
• 副業:本業の収入を補うために「おまけで増やす」仕事
• 複業:本業を含めて複数の仕事を「並列で育てる」キャリア
一言でいうと、副業は“サブの収入源”、複業は“メインが複数ある働き方・キャリア設計”です。
どちらも「仕事が一つだけではない」という点では似ていますが、
頭の中での位置づけや、将来のキャリアをどう捉えているかが大きく違います。
例えば、会社員を続けながら、空いた時間にウーバーイーツ配達で月3万円稼ぐ人は、典型的な「副業」イメージです。
一方、平日は会社員として働きつつ、週末はカメラマンとして依頼を受け、
「どちらも自分の仕事」として育てている場合は「複業」に近い考え方です。
まずは、「おこづかい稼ぎとしての仕事」なのか、「もう一つのキャリアとしての仕事」なのか、
この目線の違いを押さえておくと、後の内容がぐっと理解しやすくなります。
副業とは?収入源を増やす働き方としての意味
副業は、本業(メインの仕事)とは別に、収入を増やす目的で行う仕事を指します。
多くの場合、「本業があって、その足りない部分を補う」というイメージです。
よくある副業の例としては、
- 会社員+週末だけのコンビニバイト
- 事務職+平日夜のオンライン家庭教師
- 営業職+スキマ時間のポイントサイト・アンケート回答
など、「本業の外側で、比較的始めやすい仕事を追加する」パターンが多いです。
副業の特徴をざっくりまとめると、
- 目的:生活費の補填、貯金・娯楽費を増やす、お小遣いアップ
- 時間:本業のスキマ時間でやることが多い
- 気持ち:“とりあえず収入が増えればOK”という発想が強くなりがち
たとえるなら、会社員として働きつつ、
「土日に単発のアルバイトを入れて、あと数万円稼ぐ」ようなイメージです。
仕事としてのやりがいよりも、「いくら稼げるか」「続けやすいか」が重視されやすいのが副業です。
複業とは?キャリアや役割を増やす働き方としての意味
複業は、自分の仕事や役割を複数持ち、それぞれを本業として育てていく働き方を指します。
「メイン+サブ」ではなく、“メインが複数ある”感覚に近いのがポイントです。
たとえば、
- 会社員(マーケター)+個人でWebコンサルティング
- エンジニア+地域のNPOスタッフ+専門学校講師
- 週3日は企業の広報、残りはフリーランスのライター
といったように、「自分の名刺を複数持っている」イメージです。
複業の特徴は、
- 目的:収入だけでなく、スキル・人脈・経験の幅を広げる
- 時間:長期的なキャリア設計を前提に、仕事同士を組み合わせる
- 気持ち:“どれも自分の本気の仕事”という感覚が強い
カフェでバイトする感覚の副業が「もう1つの収入源」だとすると、
複業は「もう一つの名刺・肩書きを持つ」イメージです。
将来の独立や転職、パラレルキャリアにつなげるための、戦略的な働き方ともいえます。
副業と複業の共通点はどこにある?
言葉のニュアンスは違っても、副業と複業には共通点もたくさんあります。
ざっくりまとめると、“収入源と役割を一つに絞らない”というスタンスが共通しています。
共通点としては、
- 一つの会社・組織だけに依存しない
- 時間の使い方を自分でコントロールする必要がある
- 自己管理(スケジュール・健康・税金)がより重要になる
- 新しいスキルや人脈を得やすい
会社の中だけで完結していたキャリアから、
「自分で仕事を組み立てていくキャリア」に一歩踏み出す、という意味では、
副業も複業も同じ方向を向いているとも言えます。
ただし、“お小遣いを足したいのか”“キャリアの柱を増やしたいのか”によって、
設計の仕方や選ぶ仕事の種類が変わってくるため、
この記事ではあえて「副業」「複業」を分けて考えていきます。
日本の働き方の中で「副業/複業」が語られる背景
ここ数年で、「副業解禁」「複業歓迎」といった言葉を見かけることが増えてきました。
背景には、次のような変化があります。
- 終身雇用の前提が崩れつつあり、「会社だけに頼るのは不安」という人が増えた
- 物価上昇や将来不安から、「給与だけでは不安」「収入の柱を増やしたい」ニーズが高まった
- ITやオンラインサービスの発達で、個人でも仕事を受けやすくなった(クラウドソーシングなど)
また、企業側も、
- 社員が社外の活動でスキルや人脈を広げることをプラスに捉える
- 副業・複業を通じて、柔軟な働き方を認める会社も増えてきた
といった背景があります。
会社の会議でも、
「ウチも副業解禁を検討すべきでは?」
「複業前提で人材を採用した方が、優秀な人が来るのでは?」
といった話題が出るようになってきました。
こうした流れの中で、“お小遣い稼ぎとしての副業”から“キャリアを広げる複業”へと、
考え方がシフトしてきている、というのが最近のトレンドです。
違いの整理・使い分け
次に、具体的なシーンや求人票の文言など、実務に近い例を通して違いを深堀りします。
一覧表での比較や会話例、よくある勘違い・FAQを踏まえながら、
「自分はどのタイプに近いのか」「これからどう働き方を組み立てるか」を考えるヒントをまとめていきます。
副業と複業の違いを一覧表で比較(目的・時間の使い方・キャリアへの影響)
ここまでの内容を、一覧表で整理してみます。
| 観点 | 副業 | 複業 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 本業+サブの仕事 | 本業が複数あるイメージ |
| 主な目的 | 収入を増やす、生活費の補填 | キャリアの幅・役割・経験を増やす |
| 時間の使い方 | スキマ時間に追加する | 全体の働き方を再設計して配分する |
| 仕事の選び方 | 稼ぎやすさ・続けやすさ重視 | 自分の強み・やりたいこととの一致重視 |
| キャリアへの影響 | 一時的な収入アップが中心 | 長期的なキャリアの柱を増やす |
| 例 | 会社員+コンビニバイト | 会社員+講師+ライターなどパラレルワーク |
たとえば、残業が減って収入が少し物足りないから、
「週末にできるアルバイトを増やす」のは典型的な副業。
一方で、「会社の仕事に加えて、個人のコンサル案件を増やしていき、
将来的にはどちらにも依存しない働き方を目指す」のは複業に近い発想です。
この違いを知っておくと、
自分が今やろうとしているのは「短期的な収入アップ」なのか、
「長期的なキャリア設計」なのかを意識できるようになります。
よくあるシーンで見る副業と複業の使い分け(会社員+アルバイト/パラレルキャリアなど)
実際のシーンをいくつか見てみましょう。
シーン1:生活費を補うための夜のバイト
- 平日は9〜18時で会社員
- 週2回、19〜23時で飲食店のホールスタッフとして働く
- 目的は「家計の足し」「旅行資金を貯めたい」
この場合、働き方としてはほぼ「副業」です。
本業の内容とあまり関係なく、収入を増やすことが主な目的になっています。
シーン2:本業+同じ専門領域で仕事を増やすケース
- 平日は企業のマーケティング担当
- 週末や夜に、個人でWebマーケのコンサル案件を受ける
- 将来的には、会社に属しつつも、自分の名前で仕事を増やしていきたい
このケースは、「副業」とも言えますが、
キャリアの観点で見ると「複業」にかなり近くなります。
会社の名刺と、自分個人の名刺、どちらも本気で育てていくイメージです。
シーン3:パラレルキャリアとしての複業
- 週3日はスタートアップ企業で社員
- 週1日は地域のNPOで活動
- もう1日はオンライン講座の講師として活動
このように、「肩書きが複数あり、それぞれが自分のアイデンティティになっている」場合、
複業・パラレルキャリアと呼ばれることが多いです。
実務での会話例:「副業OK」「複業歓迎」と求人に書かれているときの読み解き方
求人票や会社の採用ページには、
「副業可」「副業相談可」「複業歓迎」といった表現が出てくることがあります。
似ているようで、少しニュアンスが違います。
「副業可」「副業OK」
- 本業の勤務時間外で、別の収入源を持つことを認めます、という意味合いが強い
- 条件として「競合他社で働かない」「就業時間に支障が出ない」などの制限がつくことも
「複業歓迎」「パラレルキャリア歓迎」
- すでに別の活動をしている人を前提に、それを尊重します、というスタンス
- NPO活動や個人での事業、別の会社との関わりなども含めて、
「多様な役割を持つ人」に来てほしいというメッセージ
面接での会話イメージとしては、
- 応募者「休日にブログ運営をしていて、少し広告収入もあります」
- 企業A(副業可)「本業に支障がなければ問題ありません」
- 企業B(複業歓迎)「その経験も含めて、当社でどう活かせるか一緒に考えましょう」
のように、活動を“許可する”だけか、“歓迎し・活かそうとする”かの差が出ることもあります。
求人で「複業歓迎」と書かれている会社は、
社員のキャリアを会社の外側も含めて応援しようという姿勢が強い場合が多いです。
初心者がよくする副業と複業の勘違い
最後に、「勘違いあるある」を整理します。
勘違い1:「副業より複業の方が偉い・カッコいい」
→ 名前のイメージから「複業=意識高い」「副業=お小遣い稼ぎ」と上下で捉えがちですが、
大事なのは自分が何を目的にしているかです。
まずは生活を安定させるための副業が必要な時期もあれば、
余裕が出てきてから複業的にキャリアを広げるタイミングもあります。
勘違い2:「複業は、会社を複数掛け持ちしないと名乗れない」
→ 複業は、「雇用契約がいくつあるか」だけではありません。
会社員+個人の事業、会社員+NPO活動+講師など、
“役割の複線化”全体を含めて複業と呼ぶことが多いです。
勘違い3:「副業も複業も、自分の会社では絶対NG」
→ 実際には、「申請すればOK」「内容によってはOK」など、
就業規則をよく読むとグレーではなくルールが明示されているケースも増えています。
会社の総務や人事にこっそり聞いてみると、想像より柔軟な運用のこともあります。
副業・複業に関するよくある質問(FAQ)
Q1. まずは副業から始めて、将来は複業にシフトしてもいいですか?
A. もちろんOKです。
最初から複数の本業を持つのはハードルが高いので、
多くの人は「副業として始めて、手応えが出てきたら複業的な位置づけに育てていく」流れをたどります。
最初はお小遣い感覚でも、続けるうちにスキルや実績がたまり、
「これ、もう一つのキャリアとして育てたい」と感じるタイミングが来ることも多いです。
Q2. 副業や複業をすると、本業の評価が下がるのでは?
A. これは会社の文化によりますが、
少なくとも本業の成果が落ちていなければ、必ずしもマイナス評価とは限りません。
むしろ、複業を通じて得たスキルや視点が、本業での提案力・説得力につながる例もあります。
ただし、睡眠不足やスケジュールオーバーで本業に支障が出ると本末転倒なので、
「本業のパフォーマンスは最優先」という前提は大切です。
Q3. 履歴書や職務経歴書には、副業・複業を書いてもいいですか?
A. 内容と規模によりますが、
キャリアとしての複業(例:ライター、講師、コンサルなど)は、
十分にアピール材料になります。
ただし、会社が副業禁止の期間に黙ってやっていた場合などは、
応募先の文化やリスクも考えたうえで、伝え方を工夫した方がよいケースもあります。
まとめ:自分は「副業」「複業」どちらを目指すべきか?キャリアの考え方の整理
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 副業は、本業の収入を補う“サブの仕事”で、短期的な収入アップが主な目的になりやすい
- 複業は、本業を含めて複数の仕事を並列で育てる“キャリアの設計”に近い考え方
- どちらも「会社だけに依存しない」「自分の時間を自分で配分する」という共通点がある
- 求人の「副業可」「複業歓迎」の違いを理解すると、企業のスタンスも読み取りやすくなる
大切なのは、「どちらの言葉を名乗るか」ではなく、
いまの自分は何を優先したいのか(収入・スキル・経験・自由度など)を整理することです。
まずは生活の安定のために副業から始めるのも良いですし、
ある程度余裕が出てきたら、複業として「もう一つのキャリア」を育てていくのも一つの選択肢です。
この記事が、自分の働き方やキャリアの方向性を考えるヒントになればうれしいです。
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