決算資料や会議の中で「粗利は良いけど営業利益が弱いね」と言われて、
正直よく分からないまま聞き流したことはありませんか。
どちらも「利益」と付くため、違いが曖昧なままになりがちな言葉です。
この記事では、粗利と営業利益の違いを数字例と身近な例え話で整理し、
会社の会話だけでなく副業や個人の収支管理にも当てはめて分かりやすく解説します。
・粗利と営業利益の違いを一言で説明できるようになる
・数字例を使って利益の流れをイメージできるようになる
・会社や副業でどちらを見るべきか判断できるようになる
・利益に関する初心者の勘違いを防げるようになる
基礎理解・前提の整理
この章では、粗利と営業利益の基本的な意味を整理します。
それぞれが何を示す数字なのか、共通点と役割を初心者向けに噛み砕いて解説します。
ここを理解すると、後半の数字例や使い分けがスムーズに理解できます。
結論:粗利と営業利益の違いを一言で説明すると
・粗利:売上から仕入れなど直接かかった費用を引いた儲け
・営業利益:粗利から人件費や家賃など運営費を引いた儲け
粗利と営業利益は、どちらも「利益」と付くので混同しやすい言葉です。
でも役割ははっきり違います。
粗利は「商品やサービスそのものがどれくらい儲かるか」を見る数字です。
営業利益は「会社を回した結果、どれくらい儲かったか」を見る数字です。
身近な例でいうと、たこ焼き屋さんをイメージすると分かりやすいです。
たこ焼きを売って入ってきたお金が売上です。
そこから、たこ・粉・ソースなど材料代を引いた残りが粗利です。
さらに、店の家賃や電気代、アルバイト代など「お店を運営する費用」まで引いて残ったものが営業利益です。
「粗利が高いのに営業利益が低い」としたら、運営費がかかりすぎている可能性が見えてきます。
この違いが分かると、会議やニュースの決算説明がグッと理解しやすくなります。
粗利とは?初心者向けに噛み砕いて説明
粗利は「売上総利益」とも呼ばれます。
ざっくり言うと、売上から原価(仕入れなど直接かかった費用)を引いた残りです。
ここでいう原価は、商品を売るために直接必要だったお金です。
たとえば、物販なら「仕入れ代」が原価になります。
飲食店なら「食材費」が原価です。
サービス業でも、外注費や提供に必要な材料があればそれが原価に入ります。
粗利が分かると何が嬉しいかというと、
「この商品(このサービス)は儲かりやすいのか」を判断できる点です。
例えば同じ売上100万円でも、原価が90万円なら粗利は10万円です。
原価が50万円なら粗利は50万円です。
売上だけ見ていると同じに見えますが、粗利を見ると儲かり方が全然違います。
実務の会話でもよく出ます。
- 上司「この案件、粗利どれくらい?」
- メンバー「外注が多いので粗利率は低めです」
粗利は「売上の見た目」よりも、事業の体力を見せてくれる数字です。
営業利益とは?粗利との関係もあわせて解説
営業利益は、粗利から販管費(販売費および一般管理費)を引いた残りです。
販管費は難しく聞こえますが、要するに「会社を運営するための費用」です。
代表的な販管費には、次のようなものがあります。
- 人件費(給料、社会保険など)
- 家賃、光熱費
- 広告宣伝費
- 交通費、通信費
- 事務用品費
- システム利用料(SaaSなど)
つまり営業利益は、商品が儲かるかどうかだけでなく、
「会社の運営がうまく回っているか」も含めて見える数字です。
粗利が高くても、人を増やしすぎたり家賃が高かったり広告費を使いすぎたりすると、営業利益は減ります。
逆に粗利がそこまで高くなくても、運営費をうまくコントロールできていれば営業利益が残ることもあります。
会議でよくあるのは、売上や粗利を追いかけているのに、最後に「思ったより利益が残らない」という状況です。
その原因は多くの場合、販管費にあります。
営業利益は、その「残り具合」を見る指標です。
粗利と営業利益の共通点は何か?
粗利と営業利益は違う数字ですが、共通点もあります。
どちらも利益の一種で、儲かり具合を測る指標です。
そしてどちらも、売上だけでは分からない「中身」を見せてくれます。
売上は大きくても、原価が高ければ粗利は薄くなります。
粗利が厚くても、運営費が高ければ営業利益は薄くなります。
このように、数字を分解して「どこが問題か」を探すために使われます。
また、粗利も営業利益も「改善の打ち手」が考えやすいのが特徴です。
- 粗利を改善したい → 仕入れを安くする/値付けを見直す/原価を下げる
- 営業利益を改善したい → 人件費や固定費を見直す/広告費の効率を上げる
つまり、どちらも「次に何をすべきか」を考えるための道具です。
この前提を押さえたうえで、次は違いを整理していきます。
違いの整理・比較・使い分け
ここでは、粗利と営業利益の違いを具体的な数字例で比較します。
会社の実務や副業のケースを交えながら、どの場面でどちらを見るべきかを整理します。
よくある勘違いやFAQも含めて、実践的な理解を目指します。
粗利と営業利益の違いを比較して整理
違いを混乱しないように、まず表で整理します。
ポイントは「どこまで費用を引いているか」です。
| 項目 | 粗利(売上総利益) | 営業利益 |
|---|---|---|
| 計算 | 売上 − 原価 | 粗利 − 販管費 |
| 見ているもの | 商品・サービスの儲かりやすさ | 会社運営の儲かり具合 |
| 代表的な費用 | 仕入れ、材料、外注など | 人件費、家賃、広告、光熱費など |
| 使い所 | 値付けや原価の見直し | 体制や固定費の見直し |
粗利は「この商売は筋が良いか」を見る数字です。
営業利益は「会社としてちゃんと残せているか」を見る数字です。
決算ニュースで「営業利益が大幅増」と聞いたら、
単に売れたというより、運営がうまく回っている可能性が高いと読み取れます。
数字例で見る粗利と営業利益の計算イメージ
ここで、ざっくりした数字例でイメージを作ります。
売上だけ追うのが危ない理由も見えてきます。
例:月の売上が100万円の小さなお店(または副業)を想像します。
- 売上:100万円
- 原価(仕入れ・材料など):60万円
→ 粗利:40万円
ここまでは「商品そのものは40万円分の儲けが出ている」状態です。
次に運営費がかかります。
- 人件費:15万円
- 家賃:10万円
- 光熱費:3万円
- 広告費:5万円
- その他(通信費など):2万円
→ 販管費合計:35万円
粗利40万円 − 販管費35万円
→ 営業利益:5万円
この例だと、売上は100万円あっても、会社として残る営業利益は5万円です。
「売上100万円」と聞くと大きく見えますが、手元に残るのは意外と少ないですよね。
逆に、原価を55万円に下げられたら粗利は45万円になり、営業利益は10万円になります。
また、広告費を効率化して3万円にできたら営業利益は7万円になります。
つまり粗利と営業利益は、改善ポイントを見つけるのに向いています。
会社や副業で見る粗利と営業利益の使い分け
会社でも副業でも、粗利と営業利益は使い分けが大切です。
特に「何を改善したいか」で見るべき数字が変わります。
粗利を重視したい場面
- 値付けを決めるとき
- 仕入れ先を見直すとき
- 商品ラインナップを整理するとき
- 外注比率が高い仕事の採算を確認するとき
例えば副業で動画編集をしている場合、
売上10万円でも外注が7万円なら粗利は3万円です。
「忙しいのにお金が残らない」原因がここで見えます。
営業利益を重視したい場面
- 人を増やす(採用・外注)判断
- オフィスや店舗を借りる判断
- 広告を増やす判断
- 固定費が増えてきたとき
例えば店舗ビジネスで、売上が伸びても営業利益が伸びないなら、
家賃や人件費が重くなっている可能性があります。
実務の会話例だと、こういうやり取りがよくあります。
- 上司「粗利はいいけど、営業利益が残ってないね。固定費が重い?」
- 担当「人員増で人件費が増えました。配置を見直します」
つまり、粗利は「商品目線」、営業利益は「会社目線」です。
両方を見ることで、改善の方向性がズレにくくなります。
初心者がよくする粗利と営業利益の勘違い
ここはつまずきやすいポイントなので、あるあるをまとめます。
1つ目は、粗利=最終的に残るお金と勘違いすることです。
粗利はあくまで「原価を引いた後」で、運営費はまだ引かれていません。
粗利が大きくても、営業利益が小さいことは普通にあります。
2つ目は、営業利益=手元の現金と勘違いすることです。
営業利益は会計上の利益なので、入金タイミングや借入返済などで現金とズレることがあります。
初心者のうちは、営業利益は「運営した結果の儲けの目安」と理解しておけば十分です。
3つ目は、売上を伸ばせば利益も増えると思い込むことです。
実際は、売上を伸ばすために広告費や人件費が増えて、営業利益が減ることもあります。
特に値引きで売上を作ると、粗利率が下がりやすいです。
4つ目は、粗利率(利益率)を見ずに忙しさだけ増えることです。
副業でも「案件は増えたのに残るお金が増えない」はよくあります。
粗利と営業利益の視点で見直すと、原因が見つかりやすいです。
粗利と営業利益に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 粗利率って何ですか?
A. 売上に対して粗利がどれくらいあるかの割合です。
ざっくり、
粗利率=粗利 ÷ 売上
です。
売上100万円で粗利40万円なら粗利率は40%です。
粗利率が高いほど、商品としては儲かりやすい傾向があります。
Q2. 営業利益がマイナスでも粗利がプラスのことはありますか?
A. あります。
商品自体は儲かっている(粗利プラス)けれど、運営費がかかりすぎている状態です。
例えば人件費や家賃が重い、広告費が先行している、などが原因になります。
Q3. 副業でも営業利益まで考える必要がありますか?
A. はい、考える価値はあります。
副業でも、ツール代、交通費、外注費、広告費など「運営費」は発生します。
粗利だけ見ていると「頑張っているのに残らない」になりやすいので、
月単位でざっくり営業利益(=粗利−運営費)を計算するだけでも効果があります。
まとめ:粗利と営業利益の違いと押さえるポイント
最後に要点を整理します。
- 粗利は売上から原価を引いた儲けで、商品・サービスの儲かりやすさを見る数字です。
- 営業利益は粗利から運営費(販管費)を引いた儲けで、会社運営として残る儲けを見る数字です。
- 粗利が高くても、運営費が高いと営業利益は残りません。
- 改善したい対象が「原価・値付け」なら粗利、「固定費・体制」なら営業利益を見るとズレにくいです。
迷ったら、たこ焼き屋さんのイメージに戻ってください。
材料代を引いた残りが粗利。
家賃や人件費まで引いた残りが営業利益です。
この違いが分かるだけで、会議の数字の話も、副業の採算判断も、ぐっと現実的になります。
