「フリーランスで働いています」と名乗る人が増える一方で、
税金や手続きの話になると「個人事業主」という言葉が出てきて、「結局何が違うの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
どちらも「会社員ではない働き方」を指しているように見えますが、
実は、日常会話での使われ方と、税務上の扱われ方には微妙な差があります。
この違いを理解しておくと、開業届や確定申告、名刺の肩書きのつけ方などで迷いづらくなります。
この記事では、フリーランスと個人事業主の意味・共通点・違いをやさしく整理し、
実務でどう使い分ければいいのかを、具体例を交えながら解説していきます。
・フリーランスと個人事業主という言葉の意味と関係性が整理できる
・会話の中と税務・手続きの中での使われ方の違いがわかる
・自分がフリーランス/個人事業主のどこに当てはまるかイメージできる
・開業届や確定申告、名刺の肩書きを考えるときのポイントがつかめる
基礎理解・前提
まずは、「フリーランス」と「個人事業主」という2つの言葉の基本的な意味を整理します。
なんとなく同じように聞こえますが、実は「働き方としての呼び方」と「税務上の区分」という役割の違いがあります。
ここでは、その前提となる定義と、日常会話でのイメージをそろえていきましょう。
結論:フリーランスと個人事業主の違いを一言で説明すると
- フリーランス:働き方やスタイルを指す“肩書き・生き方”のイメージに近い言葉
- 個人事業主:税務署に開業届を出した“事業の形態(法的区分)”を指す言葉
つまり、ざっくり言うと「フリーランスは名乗り方」「個人事業主は税務上のカテゴリー」と考えるとスッキリします。
Webデザイナーでも、ライターでも、エンジニアでも、「会社に雇われず、自分で案件を取って働く人」が一般的にフリーランスと呼ばれます。
一方で、税務署にとっては「フリーランスかどうか」は関係なく、会社員でもない“自分で商売をしている人”はまとめて個人事業主という扱いになります。
名刺やSNSでは「フリーランスデザイナー」と名乗っていても、税金や確定申告の書類上は「個人事業主」という整理になる。
この二重構造を押さえておくと、用語の混乱がかなり減ります。
フリーランスとは?働き方としての意味をやさしく整理
フリーランスは、簡単に言うと特定の会社に正社員として雇われず、案件ごとに仕事を受ける働き方を指します。
「雇用契約」ではなく、「業務委託契約」で仕事をすることが多いのも特徴です。
たとえば、こんなイメージです。
- Web制作の案件を複数のクライアントから受けるWebデザイナー
- いくつかのメディアから依頼を受けるライター
- 複数の企業のシステム開発に関わるエンジニア
会社員との一番大きな違いは、自分で仕事を選び、自分で値段を決め、自分で時間や働き方をコントロールする度合いが高いことです。
一方で、
- 仕事が途切れるリスクも自分で負う
- 仕事用のパソコンやソフト、勉強にかかる費用も自分で投資する
といった側面もあります。
カフェでPCを開いて仕事をしている人を見て「フリーランスっぽいな」と感じるのは、
「会社に行かずに、自分の裁量で働いている」雰囲気があるからですね。
個人事業主とは?税金・届け出の観点から噛み砕いて説明
個人事業主は、税務署に「個人事業の開業届」を出して、自分の名前で事業を行っている人を指します。
ここでポイントなのは、「働き方のオシャレさ」ではなく、あくまで税務上の区分だということです。
個人事業主には、次のような人たちが含まれます。
- フリーランスのデザイナー・ライター・エンジニア
- 町のお弁当屋さん、美容室、個人経営のカフェ
- 自宅で教室を開いている講師や、オンラインスクールの運営者
つまり、「自分の名前で事業をしているけれど、会社(法人)は作っていない人」はたいてい個人事業主になります。
開業届を出すと、
- 青色申告(65万円控除など)のメリットを利用できる
- 事業用の売上と経費を、税金の計算上きちんと分けられる
- 税務署的に“事業としてやっている人”として扱われる
といったメリットがあります。
大事なのは、フリーランスと名乗っていても、開業届を出せば税務上は個人事業主になるという点です。
逆に、フリーランスと名乗っていなくても、個人で店を開いて商売していれば、その人は個人事業主です。
フリーランスと個人事業主の共通点はどこにある?
細かな言い方の違いはあっても、共通点も多くあります。
ざっくり言うと、**どちらも「会社員ではなく、自分で仕事を取ってくる立場」**という点で同じです。
代表的な共通点を挙げると、
- 自分で売上をつくる必要がある
- 仕事道具やスキルへの投資は基本的に自己負担
- 給与明細ではなく、「売上 − 経費」で利益(所得)を計算する
- 年末調整ではなく、自分で確定申告をする(※例外はあります)
イメージとしては、
会社員が「会社の経理部が全部計算してくれた結果が給与明細」だとすると、
フリーランス/個人事業主は「小さな会社の社長兼従業員として、自分で売上と経費を管理する」イメージです。
コンビニのレジ打ちだけをするパートさんと、
仕入れや売上管理もしている店長さんの違いを想像すると、
「自分で管理するものの量」が見えてくるかもしれません。
日常会話での「フリーランス/個人事業主」の使われ方イメージ
実際の日常会話では、「フリーランス」と「個人事業主」はこんな感じで使い分けられています。
日常会話・自己紹介でよく使われるのは「フリーランス」
- 「何してる人ですか?」
「フリーランスのエンジニアです」 - 「最近会社辞めて、フリーランスになりました」
ここでは、働き方のスタイルをざっくり伝えるために「フリーランス」が選ばれやすいです。
一方で、役所や税金の話になると「個人事業主」
- 確定申告書類や開業届の書類には「個人事業主」の表現が使われる
- 銀行の事業用口座を開くときにも「個人事業主」の選択肢がある
また、請求書には「屋号+氏名」を書くことが多く、
その実態は「個人事業主として請求している」形になります。
つまり、名刺やSNSでは“フリーランス○○”と名乗りつつ、
税務署や銀行には“個人事業主○○”として接しているのが、実務上のリアルな姿です。
違いの整理・使い分け
次に、具体的なシーンや書類の場面を通して、2つの言葉の違いと使い分け方を見ていきます。
一覧表での比較や、IT案件・副業・請求書・確定申告などの例を交えながら、
「自分はどう名乗ればいいのか」「どんなときにどの言葉を使えばいいのか」を具体的にイメージできるように整理します。
フリーランスと個人事業主の違いを一覧表で比較(法的な立場・イメージ・実務)
ここまでの話を、一覧表で整理してみます。
| 観点 | フリーランス | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 言葉の性質 | 働き方・スタイルを表す呼び名 | 税務・法的な区分 |
| 使われる場面 | 自己紹介、SNS、求人サイトなど | 開業届、確定申告、銀行・役所の書類 |
| 法律上の位置づけ | 正式な法律用語ではないことが多い | 所得税法などで扱われる実務用語 |
| 中身 | 会社に雇われずに仕事を受ける人全般 | 自分名義で事業を営む人(法人でない) |
| 例 | フリーランスライター、フリーランスエンジニア | 八百屋、個人経営のカフェ、フリーランスデザイナー等 |
実務上は、フリーランスの多くが個人事業主に該当するため、
「フリーランス=個人事業主」とほぼ同じ意味で使われることも多いです。
ただし、「法人化して会社を作ったフリーランス(=社長)」も一定数いるため、
厳密には「フリーランス ⊃ 個人事業主」というイメージを持っておくと混乱しにくくなります。
具体的な働き方シーンで見るフリーランスと個人事業主の使い分け
実際の働き方シーンで見ると、使い分けの感覚がつかみやすくなります。
シーン1:ITエンジニアの場合
- 自己紹介
- 「フリーランスのエンジニアをしています。主にWebサービスの開発です」
- 税務署に出す書類
- 「職業:ソフトウェア開発業」として、個人事業主として開業届を提出
ここでは「フリーランス」はあくまで名乗り方で、
中身としては「IT系の個人事業主」です。
シーン2:小さなカフェを開いたケース
- 近所への挨拶
- 「個人で小さなカフェを始めました」
(“フリーランスカフェオーナー”とはあまり言わない)
- 「個人で小さなカフェを始めました」
- 書類上
- 個人事業主として「飲食業」で開業届を提出
この場合は、フリーランスという言葉よりも「個人経営」「個人事業主」の方がしっくりきます。
シーン3:会社員+副業のライター
- 普段は会社員、夜と週末にWebメディアから記事の依頼を受けている
- 仕事の内容としてはフリーランス的ですが、副業の規模が小さいうちは、
あえて開業届を出さず「雑所得」として申告する選択肢もあります
このように、「フリーランスかどうか」と「個人事業主かどうか」は完全な1対1ではないイメージです。
実務でよくある会話例・よくあるシーン(IT案件・副業・請求書・確定申告など)
ここでは、実務でありがちな会話やシーンをいくつか紹介します。
会話例1:IT案件の打ち合わせ
- クライアント「会社員ですか? 個人でやっているエンジニアさんですか?」
- あなた「会社員ではなく、フリーランスのエンジニアです。個人事業主として活動しています」
ここで、「フリーランス」が働き方、「個人事業主」が法律・税務上の立場を補足するイメージです。
会話例2:銀行口座を作るとき
- 窓口「お仕事の形態は?」
- あなた「個人事業主です。Web制作の仕事をしています」
銀行や役所では「フリーランス」より「個人事業主」の方が通じやすいことが多いです。
シーン:請求書・確定申告
- 請求書:
- 「屋号+氏名」「住所」「振込先」などを記載し、個人事業としてクライアントに発行
- 確定申告:
- 毎年1〜3月頃に、1年間の売上と経費を整理して税務署に申告
ここで、「あ、自分は“会社から給与をもらう側”ではなく、“自分で売上・経費を管理する側”なんだな」と実感が湧きます。
このあたりのリアルな事務作業も、フリーランス/個人事業主の共通した日常です。
初心者がよくするフリーランスと個人事業主の勘違い
最後に、「勘違いあるある」を整理しておきます。
勘違い1:フリーランスと個人事業主は、どちらか一方しか名乗れない
→ 実際には、両方当てはまる人が多いです。
名刺やSNSでは「フリーランス」、税務や銀行では「個人事業主」と使い分けるイメージでOKです。
勘違い2:フリーランスになる=必ず開業届を出さなければいけない
→ 規模の小さい副業レベルなら、すぐに開業届を出さずに様子を見る選択もあります。
ただし、青色申告のメリットを受けたいなら、早めに開業届を出した方が有利なケースが多いです。
勘違い3:個人事業主=カフェやお店を構える人だけ
→ 実は、家でパソコン1台で仕事をするWebライターやデザイナーも立派な個人事業主です。
店を構えていなくても、「自分で継続的にお金を稼ぐ活動」をしているなら、その時点で“事業”と見なされます。
フリーランスと個人事業主に関するよくある質問(FAQ)
Q1. フリーランスとして活動するなら、必ず個人事業主にならないとダメですか?
A. “ダメ”というわけではありませんが、
継続的に売上が出ているなら、開業届を出して個人事業主として整理しておく方が、税務上スッキリします。
青色申告の特典(65万円控除など)を使えるのもメリットです。
Q2. 法人を作ったら、もう個人事業主でもフリーランスでもなくなるの?
A. 法人化すると、税務上は「会社(法人)として事業をする人」になります。
ただし、働き方としては引き続き「フリーランス的」に複数のクライアントと契約する人も多く、
自己紹介として「フリーランスエンジニアです」と名乗るケースもあります。
Q3. 名刺には“フリーランス”“個人事業主”どちらを書けばいいですか?
A. 対面相手が誰かによって変えるのがおすすめです。
クライアントや制作会社とのやり取りが多いなら「フリーランスデザイナー」などが伝わりやすく、
銀行・士業・役所とのやり取りでは「個人事業主」と表記した方が話がスムーズです。
Q4. “フリーランス”という肩書きだと信用面で不利になることはありますか?
A. 企業によって受け止め方は様々ですが、
肩書きそのものより、「実績やポートフォリオ」「継続案件の有無」などの方が信用に影響します。
必要に応じて「個人事業主として開業している」「○年継続して事業をしている」などを補足すると、安心材料になります。
まとめ:自分はフリーランスと名乗るべきか?個人事業主と理解すべきか?
最後に、ポイントを整理します。
- フリーランスは働き方のスタイル・生き方に近い言葉で、
個人事業主は税務・法的な区分としての言葉です。 - 多くの場合、「フリーランスとして働いている人」が、税務上は「個人事業主」に当たります。
- 日常会話や自己紹介では「フリーランス」、
役所・銀行・税務署とのやり取りでは「個人事業主」と使い分けるとスムーズです。 - 大事なのはラベルよりも、自分が今どのくらいの規模で、どんなスタイルで仕事をしたいのかを整理することです。
「自分はフリーランスなのか、個人事業主なのか?」と迷ったときは、
「名乗り方としての自分(フリーランス)」と「税務上の自分(個人事業主)」の2つの顔がある、と理解しておくと、
これからの働き方の選択や、手続き・書類の不安が少し軽くなるはずです。
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