「クラス」と「オブジェクト」という言葉を、プログラミング入門やITの説明で見たことはあるものの、「何が違うのか分からない」「結局どう使い分けるのか曖昧」という方は多いのではないでしょうか。
とくにIT用語に苦手意識があると、急に難しい概念に感じてしまいがちです。
しかし、クラスとオブジェクトの関係は、実はとても身近な考え方で説明できます。
この記事では、IT初心者の社会人の方に向けて、クラスとオブジェクトの違いを例え話を交えながらやさしく整理します。
読み終える頃には、「これはクラスの話」「これはオブジェクトの話」と自然に切り分けられるようになります。
基礎理解・前提の整理
クラスとオブジェクトを理解するためには、まず全体像をシンプルに掴むことが大切です。
言葉の定義だけを見ると難しく感じますが、「設計図」と「実物」という関係を押さえるだけで理解はぐっと楽になります。
この章では、最初に結論を示したうえで、クラスとは何か、オブジェクトとは何か、そして両者の共通点を順番に解説します。
ここを理解しておくことで、後半の比較や使い分けがスムーズになります。
結論:クラスとオブジェクトの違いを一言で説明すると
一言でいうと、クラスは設計図で、オブジェクトは設計図から作られた実物です。
クラスは「こういう特徴と動きのものを作ります」という型の定義です。
オブジェクトは、その型をもとに実際に作られた具体的な存在です。
たとえば、たい焼きを想像してみてください。
クラスはたい焼きの型のようなもので、形やサイズのルールが決まっています。
オブジェクトは、その型で焼いた「たい焼き1個1個」です。
同じ型から作られていても、あんこの量が違ったり、焼き加減が違ったりして個体差が出ます。
この関係を押さえると、後の理解が一気に楽になります。
クラスとは?初心者向けに噛み砕いて説明
クラスは、プログラムの中で「モノの特徴」と「できること」をまとめた設計図です。
ここでいう特徴は「データ」、できることは「処理」と思ってください。
難しい言葉でいうと、特徴はプロパティや属性、できることはメソッドと呼ばれます。
ただ初心者のうちは、特徴と動きをセットにした型と覚えるのが十分です。
会社の例でいうと、クラスは「社員の定義」に似ています。
社員には名前、社員番号、部署がある、と決められます。
さらに社員は、勤怠を打刻する、申請を出す、という行動もできます。
この「社員とはこういうもの」というルールをまとめたものがクラスです。
クラス自体は「定義」なので、クラスを作っただけでは実際の社員は存在しません。
ここが次のオブジェクトの話につながります。
オブジェクトとは?クラスとの関係もあわせて解説
オブジェクトは、クラスという設計図から作られた具体的な実物です。
プログラム上で実際に動き、データを持ち、処理も行います。
クラスが「社員の定義」なら、オブジェクトは「佐藤さん」「田中さん」といった実在する社員に当たります。
同じクラスから作られたオブジェクトでも、中身のデータは違えられます。
佐藤さんは営業部、田中さんは総務部、のように個別の情報を持てます。
一方で、できることはクラスで決まっているので、社員なら誰でも勤怠を打刻できる、という共通ルールは保たれます。
つまりオブジェクトは、同じ型を共有しながら個別の状態を持つ存在です。
この「共通ルールと個別データの両立」が、クラスとオブジェクトを使う大きなメリットです。
クラスとオブジェクトの共通点は何か?
クラスとオブジェクトは役割が違いますが、共通点もあります。
どちらも、プログラムを「部品化」して整理しやすくするための考え方です。
とくに、現実世界のモノや人をプログラムに落とし込むときに役立ちます。
共通して重要なのは、データと処理をセットで扱うという点です。
たとえば「社員」という対象を考えると、名前や部署というデータだけでなく、申請する、承認する、といった動きもセットになります。
クラスはそのセットの「ルール」を定義し、オブジェクトはそのルールに沿った「実物」として動きます。
また、クラスとオブジェクトはセットで語られることが多く、片方だけでは意味が薄くなります。
クラスだけだと実物がなく、オブジェクトだけだと型がなくて管理が大変です。
だからこそ、両方を組み合わせることで、分かりやすく、再利用しやすいプログラムに近づきます。
違いの整理・比較・使い分け
基礎を押さえたあとは、「実際にどう違うのか」「どんな場面で意識すればよいのか」を整理していきます。
初心者がつまずきやすいのは、用語の意味よりも、会話や文章の中でどう捉えるかという点です。
この章では、クラスとオブジェクトの違いを比較しながら、具体的な利用シーンやよくある勘違いも紹介します。
仕事や学習の場面で判断に迷わなくなることを目標に進めていきます。
クラスとオブジェクトの違いを比較して整理
違いを整理するコツは、設計図か実物かで考えることです。
クラスはルールや型の定義で、オブジェクトはその型から作られた実体です。
比較すると、次のようになります。
| 項目 | クラス | オブジェクト |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 設計図 | 実物 |
| 役割 | 型やルールを定義する | データを持って動く |
| 作られ方 | 人が定義する | クラスから生成される |
| 複数作れるか | クラスは1つでもOK | 同じクラスから複数作れる |
コンビニで例えると、クラスは「おにぎりの作り方レシピ」です。
具材や形、包み方のルールが決まっています。
オブジェクトは「ツナマヨおにぎり1個」「鮭おにぎり1個」といった実物です。
レシピは同じでも、具が違えば別の実物になります。
この関係を押さえると、文章で「クラスを作る」「オブジェクトを作る」という表現が出てきても迷いにくくなります。
具体的な利用シーンで見るクラスとオブジェクトの使い分け
使い分けは「作る段階」と「動かす段階」で考えると分かりやすいです。
クラスは、まず最初に「こういうものを扱います」と決めるときに作ります。
オブジェクトは、実際の処理の中で必要な分だけ作って使います。
たとえばECサイトを考えます。
「商品」というクラスを作れば、商品名、価格、在庫数などの項目が決まります。
そして、実際の運用では「りんご」「バナナ」「みかん」といった商品オブジェクトが多数存在します。
カートに入れる、在庫を減らす、合計金額を計算する、といった処理はオブジェクトが持つデータを使って進みます。
ポイントは、クラスは共通ルールをまとめるためにあり、オブジェクトは日々の処理で実際に使われるということです。
現場のイメージとしては、クラスは「フォーマット」、オブジェクトは「記入済みの具体例」と考えると理解が早いです。
初心者がよくするクラスとオブジェクトの勘違い
初心者がよくやってしまう勘違いを整理します。
これを知っておくだけでも混乱が減ります。
1つ目は、クラスとオブジェクトを同じものだと思うことです。
クラスは定義で、オブジェクトは実体です。
設計図と実物は別物だと意識すると整理できます。
2つ目は、クラスを作ればすぐ使えると思うことです。
クラスを定義しただけでは、まだ実際のデータはありません。
使うためにはオブジェクトを生成し、その中に具体的な値を持たせる必要があります。
3つ目は、オブジェクトは1つだけだと思うことです。
同じクラスから、オブジェクトは何個でも作れます。
むしろ、同じ型の実物が大量に必要だからこそ、クラスという仕組みが役に立ちます。
会議でたとえるなら、議事録のテンプレがクラスで、毎回の議事録ファイルがオブジェクトです。
テンプレは1つで、ファイルは会議の回数だけ増えます。
この感覚がつかめると、プログラミングの文章も読みやすくなります。
まとめ:クラスとオブジェクトの違いと使い分けの要点
最後に要点をまとめます。
- クラスは設計図や型です。
- オブジェクトはクラスから作られた実物です。
- 共通点は、データと処理をセットにして部品化しやすくする考え方です。
- 使い分けは、ルールを決めるのがクラス、実際に動かすのがオブジェクトです。
迷ったときは、これは型の話か、具体例の話かを考えてみてください。
型ならクラスです。
具体例ならオブジェクトです。
この違いを押さえると、オブジェクト指向という言葉も一気に身近になります。
仕事で仕様書や技術記事を読むときも、理解がスムーズになるはずです。
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