「給料は上がったはずなのに、思ったほど手取りが増えない…。」
そう感じたことはありませんか。
そのカギを握っているのが、毎月の給与明細に並ぶ「所得税」と、翌年6月からじわじわ効いてくる「住民税」です。
本記事では、サラリーマン目線で住民税と所得税の違い・共通点・家計への影響を、できるだけ専門用語を避けながら丁寧に解説します。
転職や副業、ふるさと納税を検討している人にも役立つ内容です。
・住民税と所得税の基本的な違い(誰に・いつ・どう払う税金か)
・給与明細と住民税決定通知書の見方と、2つの税金の関係
・転職・残業・ふるさと納税が住民税と所得税に与える影響
・サラリーマンが手取りを把握するうえで押さえておきたいポイント
基礎理解・前提
この章では、まず住民税と所得税の基本的な性格の違いを整理します。
「国の税金か、自治体の税金か」「今年の所得にかかるのか、去年の所得にかかるのか」といった前提を押さえることで、後の章の理解がぐっとラクになります。
結論:住民税と所得税の違いを一言で
•住民税:前年の所得に対して、あとからまとめてかかる地方税
•所得税:その年の給料から、そのつど天引きされる国の税金
どちらも「収入にかかる税金」ですが、誰に払うか(国か・市区町村か)と、いつ・どうやって払うかが大きく違います。
サラリーマンの場合、所得税は毎月の給与明細で少しずつ引かれ、住民税は翌年6月から「前年分」を12回に分けて支払っていくイメージです。
会社の会議でいうと、所得税は「その場の進行役が、その都度調整する役割」、住民税は「前年の結果を見たうえで、翌年の予算をまとめて決める役割」に近いとイメージすると、性格の違いがつかみやすくなります。
住民税とは?サラリーマン向けにざっくり解説
住民税は、自分が住んでいる自治体(都道府県・市区町村)に払う税金です。
道路の整備やゴミ収集、図書館・公園など、身近な行政サービスの財源になっています。
サラリーマンの場合、住民税は次のような流れになります。
- 今年の所得(給料など)に応じて、税額がいったん計算される
- その金額が「翌年分の住民税」として決定される
- 翌年の6月から翌々年5月まで、毎月の給与から天引きされる(特別徴収)
ここがポイントで、住民税は「前年の所得」に対してかかるというタイムラグがあります。
たとえば、2024年によく残業して年収が増えた場合、その影響が住民税に反映されるのは2025年6月以降というイメージです。
コンビニのポイントカードで例えると、今年たくさん買い物をしてポイントを貯めて、翌年にそのポイント数に応じた「ランク」が決まるような感覚に近いです。
「去年どれくらい稼いだか」に応じて、翌年の住民税が決まると覚えておくとわかりやすいでしょう。
所得税とは?給与から天引きされる国の税金
所得税は、国に納める税金で、給料やボーナスなどの「所得」に対して課税されます。
サラリーマンの場合、毎月の給与から会社が自動的に天引きして、まとめて国に納めてくれています。
所得税の大きな特徴は、次の2つです。
- 累進課税(るいしんかぜい):収入が増えるほど、税率も高くなる
- その年の所得に対して、その年のうちに調整される
年末になると「年末調整」が行われます。
これは、1年間を通して仮に計算して天引きしてきた所得税の金額と、実際に払うべき金額とのズレを調整する仕組みです。
生命保険料控除や扶養控除などの書類を書くのは、この年末調整のためですね。
会社のプロジェクトで言えば、所得税は**「毎月の進捗に応じて見直されるコスト」**のようなイメージです。
毎月少しずつ仮払いしておき、年末に「払いすぎ・払い足りない」を精算している、と考えると理解しやすくなります。
住民税と所得税の共通点は何か?
住民税と所得税は、違いばかりが注目されがちですが、共通点もあります。
サラリーマン目線で見ると、次のようなポイントが共通しています。
- どちらも「所得(稼ぎ)」に対してかかる税金である
- 給与明細で「税金」の項目として毎月引かれている(住民税は6月以降)
- 年末調整や確定申告で、所得控除(扶養・保険料・医療費など)の影響を受ける
- どちらも、最終的には「手取りの少なさ」に直結する
つまり、「頑張って残業しても、思ったより手取りが増えない」理由の大部分は、この2つの税金です。
会社の飲み会の会費で例えると、
- お店側に払うお金(料理代・飲み物代)が「所得税」と「住民税」
- 手元に残るお金が「手取り」
といったイメージです。
どちらの税金も、結局はあなたの手取りに影響する「飲み会の会費」の一部だと考えると、共通イメージがつかみやすいでしょう。
給与明細と住民税決定通知書で見る住民税と所得税の関係
サラリーマンの場合、住民税と所得税はそれぞれ別の紙で姿を現します。
- 所得税:毎月の「給与明細」に金額が載っている
- 住民税:毎年5〜6月ごろに会社経由で配られる「住民税決定通知書」に金額の詳細が載る
給与明細では、たとえば以下のような並びになっていることが多いです。
- 所得税(源泉所得税)
- 住民税
- 厚生年金
- 健康保険
4〜5月ごろには住民税欄が「0円」なのに、6月から急に数万円引かれて「手取りが減った!」と驚く人も多いです。
これは、毎年6月から新しい住民税の金額が適用されるためです。
一方で、住民税決定通知書を見ると、
- 前年の所得額
- 所得控除の内容
- 市民税・県民税の内訳
- 年間の住民税額と、その月割り
などが詳しく書かれています。
会社の経費精算で言えば、「月々の精算明細(給与明細)と、年間のサマリー資料(住民税決定通知書)」の関係に近いイメージです。
両方をセットで見ることで、「なぜこの金額が天引きされているのか」が、グッと理解しやすくなります。
違いの整理・使い分け
この章では、住民税と所得税の違いを具体的なシーンや比較表を使って整理します。
転職・残業・副業・ふるさと納税など、サラリーマンが直面しやすいケースを通して、「いつどの税金を意識すべきか」をイメージできるように解説します。
住民税と所得税の違いを比較表で整理
ここまでの話を、一度表で整理してみましょう。
| 項目 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 税金の行き先 | 国 | 都道府県・市区町村 |
| 計算の対象 | その年の所得 | 前年の所得 |
| 支払いタイミング | 毎月の給与から天引き+年末調整 | 毎年6月〜翌年5月にかけて分割で天引き |
| 税率 | 所得が増えるほど税率が上がる(累進) | おおむね一律に近い税率 |
| 通知の形 | 給与明細・源泉徴収票 | 住民税決定通知書・給与明細の住民税欄 |
| 担当者イメージ | 国レベルのルール担当 | 地元自治体のサービス担当 |
サラリーマンとしては、**「所得税=今の年収にすぐ反映される税金」「住民税=去年の年収の結果として、今年じわじわ効いてくる税金」**という整理が分かりやすいです。
実務上も、転職や昇給で年収が変わると、所得税はその年からすぐに増減しますが、住民税が変わるのは翌年6月からというタイムラグがある点に注意が必要です。
サラリーマンのよくあるシーンで見る住民税と所得税の使い分け
実際の仕事や生活の場面では、住民税と所得税を次のように使い分けて考えると便利です。
シーン1:転職して年収が上がったとき
- 当年:所得税が増える(毎月の天引き額が上がる)
- 翌年:前年の年収アップが反映され、住民税も増える
「転職した年はそこまで実感がないのに、翌年の6月から急に手取りが減る」のは、このためです。
シーン2:残業やボーナスで一時的に年収が増えたとき
- 所得税:その年のうちに増える
- 住民税:翌年の6月から増える
年度末に残業が増えた人が、「翌年の住民税が高くなっていた」というケースもよくあります。
シーン3:ふるさと納税をしたとき
ふるさと納税は、主に住民税と所得税から控除されます。
仕組みは少し複雑ですが、ざっくり言うと、
- 当年:所得税が少し減る
- 翌年:住民税がその分だけ安くなる
というイメージです。
「お礼の品が届く=ふるさと納税のメリット」だけでなく、住民税と所得税の両方に関わる制度であることも知っておくと、節税効果を把握しやすくなります。
初心者がよくする住民税と所得税の勘違い
住民税と所得税は名前が似ているうえ、どちらも給料から引かれるので、次のような勘違いがよく起こります。
- 「住民税も所得税も、全部その年の年収で決まる」
→実際には、所得税は「今年の所得」、住民税は「前年の所得」がベースです。 - 「住民税が急に増えた=会社が天引きしすぎている」
→前年に残業やボーナス、転職などで年収が増えていると、翌年の住民税が増えるのは自然なことです。 - 「ふるさと納税をしたのに、全然得している実感がない」
→所得税の減少は年末調整の還付、住民税の減少は翌年の住民税額で反映されるため、タイミングがずれているだけの場合が多いです。 - 「年収と手取りの差は、ほぼ所得税だけ」
→実際には、住民税・社会保険料(厚生年金・健康保険など)が大きな割合を占めます。
会社の会議で言えば、「全部上司の判断で決まっている」と思っていたけれど、実は本社の意向(所得税)と現場の事情(住民税)の両方を見て決まっていた、というようなイメージです。
どの税金・費用がどれくらい手取りを削っているのかを意識すると、給与明細の見え方が変わってきます。
住民税と所得税に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 住民税は会社員でも「自分で払う」方法を選べますか?
A. はい、「普通徴収」といって、自分で納付書を使って支払う方法もあります。
ただし、多くの会社員は「特別徴収(給与天引き)」が原則で、会社側が特別徴収を前提にしていることがほとんどです。
副業をしている人などは、「副業分だけ住民税は自分で納付する」ように設定するケースもあります。
Q2. 会社を退職したら、住民税と所得税はどうなりますか?
A. 所得税は退職時の源泉徴収と年末調整・確定申告で精算されます。
住民税は、「退職する年の6月〜翌年5月分」がまだ残っていれば、退職時に一括で天引きされるか、後日自宅に送られてくる納付書で支払うことになります。
退職後、住民税の納付書が送られてきて驚く人が多いですが、これは「前年分の住民税」がまだ残っているためです。
Q3. 転職して年収が下がったのに、住民税が高いのはなぜ?
A. 住民税は「前年の所得」に基づいているため、前年に在籍していた会社の年収の影響が残っています。
たとえば、前の会社では年収500万円、転職後は年収350万円のような場合、しばらくは「年収500万円」時代の住民税が続く、というイメージです。
Q4. 住民税と所得税、どちらを意識して家計管理すればいいですか?
A. 日々の家計管理では、「手取りベース」で考えるのが一番です。
ただし、転職・昇給・副業・ふるさと納税など、将来の手取りに影響するイベントを考えるときには、「今年の所得税」「来年以降の住民税」両方への影響を意識できると、より賢く判断できます。
まとめ:住民税と所得税の違いと押さえておきたいポイント
最後に、住民税と所得税のポイントをあらためて整理します。
- 所得税は「今年の所得」に対して、毎月の給与から天引きされる国の税金
- 住民税は「前年の所得」に対して、翌年6月から12回に分けて払う地方税
- どちらも「所得控除」の影響を受け、ふるさと納税などの制度とも関わっている
- 転職や残業増加は、当年の所得税と翌年以降の住民税の両方に影響する
サラリーマンの立場では、どうしても「手取りの少なさ」だけに目が行きがちです。
ですが、給与明細や住民税決定通知書を一度じっくり眺めて、「これは所得税」「これは住民税」と仕分けしてみると、どこにどれだけお金が流れているのかが具体的に見えてきます。
会社でプロジェクトのコスト構造を理解すると意思決定がしやすくなるのと同じで、自分の税金の仕組みをざっくりでも理解しておくと、転職や副業、ふるさと納税、家計管理の判断が一段としやすくなります。
まずは「今年の所得税」「来年の住民税」という時間軸の違いを頭の片隅に置きながら、今後の働き方やお金の使い方を考えてみてください。
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